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くも膜下出血

Subarachnoid hemorrhage

解説:中務 正志 (宇都宮病院 脳神経外科診療科長)

くも膜下出血はこんな病気

くも膜とは、脳の外側を覆っている脳と脳脊髄(のうせきずい)液全体を包んでいる膜で、くも膜の内側の液体がたまっているスペースがくも膜下腔です。このスペースで出血が起こると「くも膜下出血」と呼ばれます。その原因の8割程度は脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)という脳の動脈がこぶ状にふくれたものの破裂です。そのほかには、脳動静脈奇形、腫瘍など色々な原因があります。症状は出血量によって異なり、単なる頭痛と吐き気から、意識障害、心肺停止までとかなりの差がみられます。死亡率は5割以上といわれ、命が助かった人でも高い確率で後遺症を残す可能性があります。また、再出血を起こす確率も高く、早期の発見と治療が重要になります。

くも膜下出血の治療法

くも膜下出血の治療は、主に4つのポイントに分けて行われます。

1 出血源の診断と再出血予防の治療
くも膜下出血の診断はまずCTなどで行い、さらに原因となる病変(主に脳動脈瘤)があるかを調べます。脳動脈瘤が疑われたら出血源の処置を行い、再出血を防止します。開頭手術によるクリッピング術(脳動脈瘤の根元を金属製のクリップで挟み、脳動脈瘤に血が届かないようにして再出血を防ぐ方法)、または脳血管内治療(コイル塞栓術:カテーテルという細い管を脳動脈瘤の中まで入れ、管にコイルという非常に軟らかい糸状の金属を挿入して脳動脈瘤を内側から固めてしまう方法)が選択されます。

2 出血による脳損傷の治療
出血で損傷した部位の脳には、その後腫れが生じて二次的に損傷が進行することがあります。この場合は薬剤などで治療し、上記1と並行して行われます。

3 脳血管攣縮(のうけっかんれんしゅく)の治療
脳血管攣縮とは、くも膜下出血を発症した3日後ごろに起こる脳の血管が細くなる現象です。2週間ほど続くと、脳に血流が届かなくなり、麻痺などさまざまな症状を引き起こして命に関わることもまれではありません。治療が困難な場合が多く、また治療薬の多くは出血源が治療されていないと使用できないので、早期の出血源処置が重要です。

4 正常圧水頭症の治療
正常圧水頭症とは、くも膜下出血の後で脳脊髄液が正常に循環しなくなる状態です。出血後1カ月ほどしてから認知症、意識障害、歩行障害、失禁などの症状が現れます。治療では、シャント手術(体内に細長い管を埋め込む方法)を行い、脳脊髄液の循環を改善します。

早期発見のポイント

早期に気づいて病院に行くことが重要です。意識障害など重篤な症状がある場合はすぐに判断できますが、それほどひどくない頭痛のみの場合、初期には見過ごされることがあります。くも膜下出血による頭痛の典型的特徴は「突然に起きた」「今までに経験したことのない痛み」といわれています。「突然に起きた」とは、頭痛が数十秒から数分でピークに達し持続することをいいます。頭痛の起きた状況を患者さんに聞くと、「テレビのこういう番組を見ていた」「食事をしていた」など、なにをしている最中に起こったか具体的に言うことができます。ただし、夜中に発症する場合もあり、この場合は「突然に」という点が曖昧になるため注意が必要です。くも膜下出血の頭痛のメカニズムは他の頭痛と異なるので、「今までの頭痛とは違う」と自覚することが多いとされています。しかし、出血が非常に少ないと頭痛が非常に軽いこともあるので注意が必要です。軽い頭痛を放置していたために再出血を起こして重篤な症状になったり、出血後の脳血管攣縮で状態が悪化してから病院に搬入されることもあります。
もし上記のような症状があり、くも膜下出血かもしれないと思ったら「明日病院で聞いてみよう」とか「自家用車で病院に行こう」とは思わず、いち早く対応しましょう。再出血はすぐに起きる可能性があり、また歩くなどして身体を動かすと再出血する危険性が増します。くも膜下出血を疑ったら、症状を聞けばくも膜下出血かどうか判断することが可能なので、すぐに救急隊もしくは病院に連絡して指示を仰いでください。くも膜下出血の可能性が高いと判断されたら、そのまま安静にして救急隊の到着を待ちましょう。

くも膜下出血が発症する予兆

多くのくも膜下出血は出血直前まで何の症状もありませんが、特殊な場合では脳動脈瘤の破裂直前に症状が出ることがあります。

1 急速に進行する複視(物が二重に見える)や片方の眼瞼下垂(まぶたが下がってしまう)が起こる
脳動脈瘤が急に大きくなったときに、近くの神経を圧迫してこのような症状が出ることがあります。この場合、近々くも膜下出血を起こす可能性が高いので、病院を受診してください。

2 解離性椎骨動脈瘤(かいりせいついこつどうみゃくりゅう)の場合
聞き慣れない病名ですが、頭の後方の動脈に亀裂が入って動脈がふくれてくる病気です。亀裂が入るときに後頭部や頚部の痛みを伴い、進行すると血管が破裂して重篤なくも膜下出血を起こすことがあります。症状からの診断は難しいことがありますが、元々頭痛持ちでない人が、頑固な後頭部の痛みを訴えて受診し、MRIなどで見つかることが少なくありません。

予防の基礎知識

具体的な予防方法としては、脳ドックなどで脳動脈瘤を前もって発見し、予防的治療を行うしかありません。兄弟など近いご家族にくも膜下出血を起こした人がいる場合は、発症率が高いとの報告があるので、検査の受診を検討してもよいと思います。脳動脈瘤があっても、すぐくも膜下出血を発症するということではなく、大きさ、形、場所、年齢などにより対応が異なるので、もし脳動脈瘤が発見されたら専門医を受診しましょう。ちなみに日本脳神経外科学会の調査(UCAS JAPAN)では、脳動脈瘤の大きさごとの年間破裂率は最大径3~4mm:0.36%、5~6mm:0.50%、7~9mm:1.69%、10~24mm:4.37%、25mm以上:33.40%と報告されています。
予防的治療の方法としては、医学解説の項目で説明したクリッピング術か脳血管内治療がありますが、治療のリスクと破裂の危険性を合わせて考えなければいけません。実際は、予防的治療を行わずに定期検査のみを行っている患者さんの方が多いと思います。
また、喫煙と高血圧は脳動脈瘤の破裂の危険性を高めるといわれているので、禁煙と高血圧の治療は必要です。しかし、残念ながら現在の医学では、薬で脳動脈瘤を小さくしたり破裂の危険性を下げたりする方法や、脳動脈瘤の発生そのものを予防する方法は見つかっていません。

中務 正志

解説:中務 正志
宇都宮病院
脳神経外科診療科長

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