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胃がん

Stomach Cancer

解説:今田 敏夫 (横浜市南部病院 院長)

胃がんはこんな病気

胃がんを引き起こす原因は不明ですが、遺伝子の異常やヘリコバクター・ピロリ(HP)菌感染、喫煙、食塩の過剰摂取など、環境によるものが関与していると考えられています。特に、HP菌は1994年にWHOから発がん性リスク因子として認定されました。HP菌によって胃に炎症が起こって胃の粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」を生じ、胃がん発生につながると考えられています。

がん部位別死亡者統計(厚生労働省「人口動態統計」2009年)によると、胃がんの死亡率は年々低下傾向にあります。しかし、男性は肺がんに次いで第2位、女性は大腸がん肺がんに次いで第3位と、多くの方が亡くなられています。男女比は大体2:1と男性が多く、年齢は60歳前後が最も多く見られます。
がんは胃の粘膜から発生し、粘膜下層、筋層、漿膜(しょうまく/胃の外の膜)へ進みます。また、周囲のリンパ節に転移したり、血液中に入って肝臓や肺に転移したり(血行転移)、胃の壁を貫き腹膜に転移します(腹膜はしゅ転移)。これらの状態を組み合わせて、病気の進行度(ステージ)をI~IVに分けます。なお、早期がんは、がんが粘膜、または粘膜の下の層までにとどまっているもの、進行がんは筋肉より深く達したものと定義しています。早期がんでも、粘膜下層までがんが達すると約20%にリンパ節転移が認められます。

胃がん


胃がんの治療法

治療法には、内視鏡的切除、手術、化学療法、緩和医療などが用いられます。

内視鏡的切除とは、内視鏡を用いて、がんを含めた粘膜を切除する方法です。リンパ節に転移している可能性のない、粘膜内にとどまっているケースが対象となります。

遠隔転移がなく、手術で完全に取り除けると診断された場合は、開腹して胃を切除し、胃と合わせて所属リンパ節(がんの近くにあるリンパ節)も切除します。また、早期がんの場合は、腹腔鏡下手術も試みられています。

術後補助化学療法は、手術によって完全に切除できた(治癒)後に、目に見えない微小のがんが残り、再発することを予防するために行われます。ステージII~IIIと診断されたがんの切除後に、「S-1」という経口抗がん剤を1年間服用することで、10%程度生存率が向上することが証明されています。
また、手術で切除ができないほど進行したがんや、再発した場合は、化学療法が第一に選択されます。最近は、腫瘍を縮小させる効果が優れている薬剤が開発されてきました。しかし、まれな例を除いて化学療法で完全に治すことは困難です。初回の治療としては、「S-1」と「CDDP」という2種類の抗がん剤を併用して投与することが推奨されます。治療しなかった場合の生存する期間は6カ月程度です。しかし、この治療法で50%の患者さんは、生存する期間が13カ月程度延長します。一方、効果がない場合や、効果が治療当初しか見られなかった場合は、異なる抗がん剤を使用する二次治療に移ります。抗がん剤治療は20~30%の症例で副作用が見られます。副作用の程度によっては中止することもあります。

そのほかの治療法として、免疫療法や放射線療法などもありますが、有効性は証明されていません。最近、分子標的治療薬(がん細胞に分子レベルで作用する薬)や手術前の抗がん剤投与などの臨床試験が行われており、新たな効果が期待されています。

末期がんや再発がんの患者さんに対する治療は、痛みを緩和するなど、がんによる症状の緩和が主体となります。限りある日々をよりよい環境で生活できるかに重点が置かれます。

早期発見のポイント

胃がんに特有の症状はなく、特に早期がんは無症状であることが多いです。がんの進行に伴って、上腹部(お腹のへそより上)の痛み、食欲不振、吐き気や嘔吐などの症状を訴えるようになります。
がんの診断は、胃レントゲン(バリウム)検査や内視鏡検査にて行われます。最近は新しい内視鏡検査機器の開発が進み、気になる箇所を拡大して確認することや、画像を鮮明にして確認することが可能となり、早期発見される症例が増加しています。
がんの深さの診断は超音波内視鏡検査で行い、周囲組織への広がりや、肝臓・肺への遠隔転移の診断は、超音波検査やCT検査、MRI検査などが用いられます。PET(陽電子放射断層撮影)検査は、早期発見にはあまり役に立ちません。

予防の基礎知識

ヘリコバクター・ピロリ(HP)菌感染、喫煙、食塩の過剰摂取など、原因となる環境の影響を少なくすることが予防の第一歩となります。またピロリ菌感染は、胃がんの重要なリスク因子と認定されていますので、HP陽性と診断されたら除菌治療を受けることが望ましいです。最近は慢性胃炎の診断でも、保険の適用内で除菌療法が受けられるようになりました。除菌法としては、胃酸の分泌をおさえるプロトンポンプ阻害薬と、2種類の抗生剤を1週間服用します。除菌成功率は70~80%程ですが、一次除菌が不成功の場合は、抗生剤を抗原虫薬に変えて、二次除菌を試みることになります。

今田 敏夫

解説:今田 敏夫
横浜市南部病院
院長

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