ホーム >  症状別病気解説 >  肩関節周囲炎

肩関節周囲炎

scapulohumeral periarthritis

解説:松村 隆 (松山病院 整形外科顧問)

肩関節周囲炎(五十肩)はこんな病気

40代や50代になると、棚の物を取る、エプロンを結ぶといった日常動作の中で肩に痛みを感じたり、夜間冷えると肩の周囲が痛くなったり、といった症状が出現することがよくあります。50歳ごろに好発するため、肩の痛みと可動域(動かせる範囲)が制限される症状を伴うものを総称して、いわゆる「五十肩」と呼んでいます。医学的には、感染症、腫瘍、骨折、脱臼や打撲など、原因がはっきりした疾患を除いて、通称「四十肩」「五十肩」と呼ばれる関節軟骨や靭帯などの老化による症状は「肩関節周囲炎」と診断されます。そのうち、関節の変形、軟骨の消失、腱板(けんばん)の断裂、石灰沈着性腱鞘炎など、肩関節を構成する構造物の一部のみに限定した症状が主体である場合は、独立した疾患名をつけて肩関節周囲炎(五十肩)とは区別します。
典型的な症状として、痛みのために肩が動かせなくなるので、肩周囲の皮膚、筋肉、靭帯への血流が減少して肩関節が固まっていきます。凍結進行期、凍結期、解凍期という時期を経て数カ月で治癒に向かいます。その期間はさまざまで、糖尿病の方や、以前にも同様の症状を繰り返し発症した方などは治癒に時間がかかります。そして、最終的に肩の可動域が制限されてしまい、痛みのために日常生活で障害が残ってしまったというケースがあります。

肩関節周囲炎の治療法

治療は、急性期においては痛みを抑えることを中心に、慢性期においては肩の関節可動域が制限されることを予防して改善することが中心です。
痛みを抑える目的では、内服、湿布(冷やさないタイプのもの)、抗炎症作用を持つステロイド剤や局所麻酔剤、ヒアルロン酸製剤などを関節内に注射します。痛みが和らげば、関節を温めながら、痛みを誘発しない程度の可動域訓練を辛抱強く続けます。これは「コドマン体操」と呼ばれる肩をブラブラさせる運動です。肩の痛みを誘発しないように十分注意しながら、上半身をリラックスした状態で、上肢の振り子運動を行います。関節周囲の筋肉が弛緩すると、肩関節の隙間が開いて、軟骨や靭帯にかかる圧力が減り、摩擦もなくなり、動かしても痛みを感じずに可動域が改善されていきます。肩甲骨の運動もまた大切です。肩甲骨の動く範囲が広がると肩への負担を減らし、痛みの誘発が減少し、肩周囲の血液循環量も改善します。

早期発見のポイント

首や肩、肩甲骨など上半身の運動をあまりしていない方は要注意です。年を取ると肩の運動範囲は日常生活で使用する範囲に限られてきます。特に、肩甲骨と首の動きが減ってきます。背中(肩甲骨)は丸くなり、腕を後ろに回すことが少なくなるため、エプロンの紐を結んだり、後ろの物を取ろうとして無理をすると、発症する場合が多くなります。
寒い季節の夜間、特に明け方も注意が必要です。肩への循環血流が減ってくるため、「肩が冷えて痛む」と訴える患者さんが多く見られます。しかし、痛みを感じるために動かさないでおくと、さらに血液循環量が減り、じっとしていることで関節包(かんせつほう/関節を包む結合組織)は固くなり、動きが悪くなっていきます。
また、糖尿病の方も発症しやすいので気を付けましょう。

予防の基礎知識

本来、肩は関節の可動範囲が大きく、肩関節を構成する筋肉とその筋肉に栄養を補給する血管が豊富であると言われています。しかし、運動不足や季節によって、肩の血液の循環が悪くなると発症しやすくなります。そこで、以下のようなことに気を付けて、血流を増やし、肩の局所体温を上げるように心がけましょう。

・首から肩にかけた上半身の筋肉の運動をする
・入浴時に肩まで十分お湯に浸かるようにする
・肩を冷やさないように肩掛けをかけて寝る

肩甲骨を含めた、上肢帯と呼ばれる肩関節周囲筋群の運動を普段から心がけることが大切です。そうすると背筋も伸びて姿勢が良くなり、発症も予防できます。ウォーキングでは上肢帯を意識して、腕を振り子運動のように振りながら歩きましょう。加えて、上半身のストレッチ、ラジオやテレビ体操、テニスや卓球、スイミングや鉄棒のぶら下がりなどが予防に適しています。ラットプルダウンなどジムにあるような器械を用いた、上肢帯を中心とした筋力訓練も効果的です。

松村 隆

解説:松村 隆
松山病院
整形外科顧問

関連情報

関節痛
症状から探す 関節痛

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

▲ページトップへ