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RSウイルス感染症

Respiratory Syncytial Virus Infection

解説:奥谷 貴弘 (済生会兵庫県病院 小児科部長)

RSウイルス感染症はこんな病気

RSウイルスは、乳幼児期の気管支炎・肺炎の原因として代表的なウイルスです。流行は、通常冬を中心に秋から春にかけてみられますが、近年は8月からの流行もみられるようになりました。2歳までにほぼすべての乳幼児が一度はRSウイルス感染症を経験するといわれています。

感染してから症状が出るまでの潜伏期間は3〜5日です。まず鼻水・発熱(微熱が多い)がみられ、その後せきが出てきます。年長児や成人(高齢者除く)は風邪症状が数日続くと、その後は回復していきます。しかし、乳幼児の場合はせきが徐々に悪化することが多いです。気管内側の粘膜が腫れ、多量に分泌された痰によって空気の通り道が狭くなることで、喘息のようなゼーゼーという呼吸困難が出てきます。こういった症状のことを「細気管支炎」と呼びます。特に6カ月未満の乳児は重症化しやすく、呼吸困難症状がひどくなり、哺乳や睡眠もままならない状態になると、入院による管理・治療が必要となります。3カ月未満の乳児では、息を止めてしまう無呼吸という症状もみられることがあり、注意が必要です。重症例では人工呼吸器を使った治療が必要になる場合もあります。鼻水がかなり多く出るため、経過中に中耳炎を合併したり、多くはありませんが低ナトリウム血症やけいれんなどがみられることもあります。

通常は数日〜1週間で軽快します。人工呼吸器を必要とする重症例であっても適切な管理・治療を行えば、時間経過とともに症状は徐々に軽くなり、最終的には回復します。

※低ナトリウム血症: 何らかの原因により血中のナトリウム濃度が低下してしまうことで、倦怠感や意識障害を引き起こす


RSウイルス感染症の診断

現在、ほとんどの病院が診断に「迅速診断キット」を使用しています。鼻水を吸い上げる、もしくは綿棒でとり、キットを用いて陽性か陰性かを判断します。結果が出るまでの時間は、通常7〜15分程度です。感染初期などでウイルス量が少ない場合は、陰性となることもあります。この検査が保険診療として認められているのは、下記の人に限られているため、それ以外の場合は原則的に検査できません。

・1歳未満の乳児
・入院中の患者
・パリビズマブ製剤(「予防の基礎知識」参照)が処方される患者


RSウイルス感染症の治療法

RSウイルスに対して効果が認められた抗ウイルス薬は、現在のところなく、基本的には対症療法を行います。哺乳量・水分摂取量が減っている場合は輸液や胃チューブを使用した経管栄養を、呼吸困難によりチアノーゼ(顔色が悪い)を起こしている場合は酸素吸入を、呼吸困難がひどい場合は人工呼吸器による治療を行います。
鼻水や痰など、分泌物が多い感染症なので、症状改善や中耳炎の予防のために、分泌物を吸引したり排泄を促すことが重要です。十分な加湿や鼻腔吸引が基本となりますが、最近では高めの濃度(3%)の食塩水を定期的にネブライザー(薬剤を気道内に噴霧する装置)で吸入する治療により、痰が気管から外に出やすくなり、症状の改善が早いという報告もあります。
ゼーゼーと喘息に似た症状が出ますが、アレルギー反応によって気管が「一時的に縮んでいる」喘息とは違って、前述のように「気管自体が腫れてしまっている」ため、喘息の治療薬を使っても効果は認められないことが多いです。鼻水を止める抗ヒスタミン薬は、鼻水や痰の粘り気を高める作用があり、かえって痰が気管から出にくくなってしまう可能性があるので、控えた方がいいでしょう。


RSウイルス感染症の予後

乳幼児期にRSウイルス感染症、特に細気管支炎を起こした子どもは、後年気管支喘息を発症しやすいといわれています。しかし、感染しないようにすることは不可能であるため、将来のワクチン開発が期待されています。乳幼児に有効なRSウイルスワクチンが開発されれば、小児の喘息患者がかなり減るかもしれません。

早期発見のポイント

秋冬(最近では8月も)に流行しやすいことを知り、保育園・幼稚園など居住地域での流行状況を把握しておくことがポイントです。「鼻水や痰の多い風邪」という症状しかないため、見ためでの判断は困難です。小さな乳幼児がいる家庭では、地域の流行状況をふまえた上で、年上の兄弟や姉妹がいれば、彼らが「鼻水や痰の多い風邪」にかかった場合、乳幼児に呼吸症状や哺乳困難が出ていないかを注意しておきましょう。症状が出たときは、早めに病院を受診することをお勧めします。6カ月未満の乳児は特に注意が必要です。

予防の基礎知識

RSウイルスは、感染している人のせき・くしゃみで飛び散る飛沫を直接吸い込み飛沫感染することもありますが、鼻水やせき・くしゃみで飛び散る飛沫に含まれるウイルスがついた手や物品(ドアノブ、手すり、スイッチ、おもちゃ、コップ等)を乳幼児の場合はなめたり、それらを触った手で鼻や目をこすって感染(接触感染)することの方が多いため、感染予防には手洗いが非常に重要です。秋冬などの流行時期や、流行している幼稚園・学校から帰ってきたときは、まず手洗いをしましょう。


予防のための注射薬

2002年に「パリビズマブ」というRSウイルスに対する抗体の注射薬が使用可能となりました。抗体は人体が元々持っている免疫のはたらきで、体内に侵入してきた異物から身を守るために作られるたんぱく質のことです。抗体があれば、RSウイルスは体内で増えることができなくなります。
この注射薬を流行期に定期的に接種することにより、体内にRSウイルスの抗体が常にある状態になり、外から侵入してきてもすぐに排除することができるようになります。ただし、抗体は1カ月経つと減ってしまうので、この注射は流行期には毎月接種することが必要です。また、誰もが接種を受けることができるわけではありません。現在、使用が保険診療で認められている人は、下記の感染によって重症化しやすいハイリスク児に限られています。

・6カ月〜12カ月以下の早産児
・2歳以下の慢性肺疾患・先天性心疾患・免疫不全・ダウン症候群の乳幼児
※詳細は受診する病院でご確認ください


予防のためのワクチン

2017年12月現在、RSウイルスに対する効果が認められたワクチンはまだありません。しかし臨床研究は進んでいて、近い将来に使えるようになるかもしれません。妊娠中の女性、2歳未満の乳幼児、60歳以上の成人がワクチンの対象として想定されています。妊娠中の女性がワクチンを接種すると、体内で作られた抗体が胎盤を通して胎児を守り、6カ月未満児の予防にはこの方法が有効になると考えられています。

奥谷 貴弘

解説:奥谷 貴弘
済生会兵庫県病院
小児科部長

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