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REM睡眠行動障害

REM Sleep Behavior Disorder

解説:近藤 英明 (済生会長崎病院 睡眠医療センター長)

REM睡眠行動障害はこんな病気

睡眠はREM(レム)睡眠とNREM(ノンレム)睡眠に分けられます。REMは英語の"Rapid Eye Movement(急速眼球運動)"の頭文字をとったものです。いわゆる、夢を見ている状態です。一晩の間に3~5回、おおよそ90分間隔で出現します。1回のREM睡眠は数分程度のこともあれば、1時間前後に及ぶこともあります。夢を見ているときに目玉がくるくる動いているため、この名称が付けられました。

REM睡眠の特徴の一つは、脱力状態になることです。夢見に関わる脳の神経活動は高まっていますが、手足は脱力状態で、思うように動かせない「金縛り」が生じています。REM睡眠時、この脱力状態にならずに、夢の通りに行動してしまう病気がREM睡眠行動障害です。夢の内容次第では自分自身がケガをする、もしくはベッドパートナーにケガさせてしまったり、周囲の物を壊すこともあります。

通常、50歳以降に、早い場合は40代から症状が目立つようになります。REM睡眠時の問題だけでなく、目が覚めているときでもにおいが分からなくなることや便秘が目立つこともあります。一部の人はパーキンソン病やレビー小体型認知症を併発していることもあり、これらの病気の初期症状として発症することがあります。そのため、これらの疾患や異常の合併がないか、初診時だけでなく、5年、10年単位の長期にわたって注意することが必要です。

夜間の行動が激しい場合には、動きを抑制するために抗けいれん薬に分類されるクロナゼパムが使用されます。これは、多くの睡眠薬や抗不安薬と同じ種類の薬剤です。不眠の改善が期待される一方で、眠気やふらつきなどに注意が必要です。睡眠時無呼吸症候群がある場合には、無呼吸が重症化することもあります。漢方薬の抑肝散を含めて、複数の薬剤が有効です。

早期発見のポイント

睡眠時に「寝言が激しい」「けんかしているように手足を動かしている」ことで気付かれることがほとんどです。動きの直後に目が覚めると、行動を反映する夢を見ていたことが確認されます。言い争っている夢の場合には、普段は考えられないような大声で怒鳴ったり、パンチを繰り出したりします。横に寝ているベッドパートナーを殴ってしまうこともあります。追われている夢の場合には、布団から飛び出してケガをすることもあり、頭を打って慢性硬膜下血腫の原因となることもあります。睡眠中の危険な行動が出現する際には、早急に睡眠障害の専門施設を受診することをお勧めします。

この病気は、ビデオ監視下での睡眠検査(ポリソムノグラフィー)を行うことで診断されます。嗅覚検査や心臓交感神経系の検査でも異常が認められることがあります。この場合には、特にパーキンソン病やレビー小体型認知症への進行や併存の有無に注意が必要です。

抗うつ薬を服用している場合にもこの病気が出現することがあります。睡眠障害の専門医だけでなく、薬剤を処方する主治医の先生にも相談の上で、薬剤の漸減・中止の可能性を検討することをお勧めします。

予防の基礎知識

飲酒が症状に影響します。アルコールは睡眠前半にはREM睡眠を抑制する一方で、代謝される睡眠後半にはREM睡眠の時間が長くなることがあります。このため、飲酒した日の夜には睡眠中の行動が激しくなることがあります。逆に、節酒や禁酒をすることで行動が目立たなくなります。

また、ケガをしないための予防策も大切です。ベッドを使用している場合、転落しないように柵を使用することや、ベッドの高さを低くすることでケガを避けることができるかもしれません。畳に布団を敷くことでベッドが関わる問題は回避できます。布団から飛び出した際の対策として、周囲に壊れやすい物やケガの原因となるような物を置かないことも重要です。

近藤 英明

解説:近藤 英明
済生会長崎病院
睡眠医療センター長

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