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ポルフィリン症

Porphyria

解説:堀江 裕 (島根県済生会江津総合病院 院長)

ポルフィリン症はこんな病気

ポルフィリン症は、ヘム合成酵素活性に先天的および後天的異常が発生することによる、代謝異常症です。8つの酵素のうち、律速酵素である、デルタアミノブリン酸合成酵素(ALAS)活性以外の7つ酵素それぞれの欠損に対応して、各種のポルフィリン症が存在します。

(表1) ポルフィリン ― ヘムの生合成系
酵素(略語) 中間体 ポルフィリン症(略称)
グリシン+サクシニル-CoA
ALA 合成酵素 (ALAS) ↓ X-染色体プロトポルフィリン症 (X-EPP)
δ-アミノレブリン酸 (ALA)
ALA 脱水酵素 (ALAD) ↓ ALA脱水酵素欠損性ポルフィリン症 (ADP)
ポルホビリノーゲン (PBG)
ヒドロキシメチルビラン 合成酵素 (HMBS) ↓ 急性間欠性ポルフィリン症 (AIP)
ヒドロキシメチルビラン
ウロポルフィリノーゲンIII 合成酵素 (UROS) ↓ 先天性赤芽球性ポルフィリン症(CEP)
ウロポルフィリノーゲン III
ウロポルフィリノーゲン 脱炭酸酵素 (UROD) ↓ 肝赤芽球性ポルフィリン症 (HEP)※
晩発性皮膚ポルフィリン症 (PCT)
コプロポルフィリノーゲン III
コプロポルフィリノーゲン 酸化酵素 (CPO) ↓ 遺伝性コプロポルフィリン症 (HCP)
プロトポルフィリノーゲン IX
プロトポルフィリノーゲン 酸化酵素 (PPO) ↓ 異型ポルフィリン症 (VP)
プロトポルフィリン IX (PP) +Fe
フェロケラターゼ (FeC)  ↓ 赤芽球性プロトポルフィリン症 (EPP)※
  ヘム  
※幼小児期発症ポルフィリン症


ポルフィリン症は10万人に数人というまれな疾患ですが、腹痛、背部痛、高血圧、褐色尿、精神神経症状など、症状が多彩であるため、患者さんは内科、外科、産婦人科、精神科などを訪れることが多く、腹痛があるときには、この病気にかかっている可能性があります。

ポルフィリン症は、障害の部位によって、肝性ポルフィリン症と骨髄性ポルフィリン症に分類されます。肝性ポルフィリン症は、 肝臓の薬物代謝を司るチトクロームなどのヘム蛋白生成に障害をおよぼす疾患で、薬物代謝の障害が起こるので、禁忌薬剤(摂取してはいけない薬剤)に注意する必要があります。急性発作が起こりますが、その原因は肝臓のヘム減少のためとされ、ヘム蛋白質であるヘミンを投与して発作の抑制を図ります。胃酸を抑える薬であるシメチジンや、安定剤のクロールプロマジンは安全に使用される一方で、禁忌薬剤としては抗てんかん薬のフェノバルビタール、胃痛薬のブスコパン、消化管運動改善薬のプリンペランなどがあり、これらは絶対に服用してはいけません。重いものを持ったり、走ったりすることの苦手な患者さんも多く、これは筋肉のミオグロビンの減少によるものと推測されます。日光にあたると疲れが出るので、夜間に行動する患者さんが多いです。

また、骨髄性ポルフィリン症は骨髄のヘモグロビン合成に障害があるため、貧血になりやすく、日光過敏症が出るのが特徴です。小児期の頃から発症するので、日光対策が重要です。体育の授業や教室では、直射日光に当たらないように注意しましょう。薬物では効果的なものがありません。

ポルフィリン症は、予防が大切です。脱水、疲労、ストレスなどを避け、水分を普段から多くとることを心掛けるとともに、疲れたら炭水化物を摂取するのが最も重要です。

早期発見のポイント

ポルフィリン症は、早期発見が極めて重要です。この病気は禁忌薬剤の投与で症状が増悪するので、生命予後を左右することがあるからです。肝性ポルフィリン症は、20歳代の女性に発症例が多く、女性ホルモンの関与が病態に関係すると考えられています。腹痛、便秘、嘔吐の消化器3症状が特徴として挙げられます。腹痛は、押すと痛みが出る一方で腹部は極めて柔らかい状態です。また、症状が多彩で、循環器症状として高血圧、精神神経症状としてはヒステリー、多発性神経炎などを伴うことが特徴です。

さらには、家族歴も挙げられます。家系内に原因不明の腹痛や高血圧性脳疾患で亡くなった方がいないかなど、詳細を伝えましょう。家族歴のない肝性ポルフィリン症例はまれです。

一方、日光過敏症例で、幼小時期に発症するのが、骨髄性プロトポルフィリン症です。骨髄性プロトポルフィリン症例では、20~30代の方で、疲労、脱水、睡眠不足などで肝蔵にポルフィリンが蓄積し、胆汁うっ滞性肝炎と診断されることがあります。

予防の基礎知識

肝性ポルフィリン症の発作予防のポイントは 水分や炭水化物を十二分に摂ることです。
その理由は、脱水を防ぐことはもちろん、ポルフィリンーヘム合成経路の抑制が糖分によって得られるからです。禁忌薬剤は、身近にある痛み止めや吐き気止め、抗けいれん剤の投与などですから、むやみにかぜくすりや痛み止めを使用しないことが重要です。患者さんの中には、かかりつけ医に薬を飲むたびに確認してから飲むという習慣をつけている方もいらっしゃいます。

骨髄性プロトポルフィリン症例では、日光対策が最も重要です。学童時期には紫外線カットの衣服を着るといった対策のほか、教室の窓ガラスへ紫外線カットシールを設置するなどの行政による対応も行われています。昼間の行動は控え、夜間になると体調もよくなるので、夜型の生活習慣をとって体調を維持している患者さんが多くいます。骨髄性プロトポルフィリン症では、薬剤については、肝性ポルフィリン症ほど気を使わなくてよいのが特徴です。

堀江 裕

解説:堀江 裕
島根県済生会江津総合病院
院長

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