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ネフローゼ症候群

Nephrotic Syndrome

解説:岡本 昌典 (済生会和歌山病院 腎センター部長)

ネフローゼ症候群はこんな病気

血液中に含まれるタンパクであるアルブミンが大量に尿中に漏れ、血液中のタンパク(アルブミン)濃度が下がることで低タンパク血症の状態になり、その結果、全身に浮腫(むくみ)が起こる疾患です。アルブミンは血管の中に水分を引き込む作用があり、血流を維持するのに重要なはたらきをしています。血液中のアルブミンが低下すると、血管の中の水分が外に漏れ、皮下や臓器の外に溜まるため、足や顔がむくみ、高度になると肺や腹部、さらに心臓や陰嚢にも水が溜まります。

血液中のタンパクが尿中に漏れるのは、腎臓の糸球体※1で炎症が起きたためです。炎症によって血液のろ過機能が低下し(糸球体の網目が粗くなり)、本来なら通過できない血液中のタンパクが通過して、尿となって排泄されてしまいます。糸球体が炎症を起こす原因についてはわかっていません。また、低タンパク血症は血液中のコレステロールも増やします。その他、腎不全、血管が詰まる血栓症(肺梗塞、心筋梗塞脳梗塞)、感染症を合併する危険性もあります。

※1糸球体: 小さな穴が網目状にあいている、微細な血管でできた球状の腎組織。それらの穴を通して血液がろ過される


ネフローゼ症候群は、明らかな原因疾患がない一次性(原発性)のものと、糖尿病膠原病などの原因疾患によって引き起こされる二次性(続発性)のものに大別されます(表1参照)。

表1:ネフローゼ症候群の原因と種類

    一次性(原発性)ネフローゼ症候群

  • 微小変化型ネフローゼ症候群(小児に多いが、成人でもみられる)
  • 膜性腎症(60歳以上の成人に多い)
  • 巣状分節性糸球体硬化症
  • 膜性増殖性糸球体腎炎

  • 二次性(続発性)ネフローゼ症候群

  • 糖尿病性腎症
  • ループス腎炎(全身性エリテマトーデスに合併)
  • アミロイドーシス(骨髄腫などの免疫グロブリン異常など)
  • 紫斑病性腎炎
  • 悪性腫瘍に合併する(ホジキンリンパ腫、消化器がんなど)
  • 感染症に合併する(B型肝炎、C型肝炎、HIV感染)
  • 薬剤性(金製剤、非ステロイド性抗炎症薬)

一次性のネフローゼ症候群は小児から高齢者までみられますが、いくつかのタイプがあり、40歳くらいまでは微小変化型タイプのネフローゼ症候群をきたすことが多く、高齢者では膜性腎症タイプをきたすことが多いです。

二次性のネフローゼ症候群は、体の他の部分にも影響を及ぼし、最も多くみられる病気として糖尿病全身性エリテマトーデス、特定のウイルス感染症があります。腎臓に対して毒性を示すいくつかの薬もネフローゼ症候群を引き起こす可能性があり、特に非ステロイド系抗炎症薬が原因になる場合もあります。

ネフローゼ症候群の診断

診断は、症状、身体所見、および臨床検査の結果に基づいて行われます(表2参照)。

表2:成人ネフローゼ症候群の診断基準

  • ①尿タンパク:3.5g/日以上が持続する
    (随時尿において尿タンパク/尿クレアチニン比が3.5g/gCr以上の場合もこれに準ずる)
  • ②低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0g/dL以下
    (低タンパク血症とした場合は、血清総タンパク量6.0g/dL以下)
  • ③浮腫
  • 脂質異常症(高LDLコレステロール血症)

一次性ネフローゼ症候群の場合、失われたタンパクの量を測定するには、24時間にわたって尿を採取する検査が有用ですが、丸1日かけて尿を集めるのは困難です。その代わりに、1回だけ採取した尿サンプルで検査を行い、クレアチニン(老廃物)の濃度に対するタンパク濃度の比を求めることによって、失われたタンパクの量を推定することも可能です。
さらに血液検査と上記以外の尿検査によって、脂肪円柱の出現などネフローゼ症候群の特徴がないかを調べます。原因は様々であるため、超音波で背中から腎臓を検査し、実際に腎臓の組織を針で取って顕微鏡で調べる腎生検は、病型の確認と治療方針を決定するために非常に有用です。

二次性ネフローゼ症候群の場合は、膠原病、血管炎、アレルギー性疾患がきっかけで起こることがあり、また、薬物も含めて原因として考えられるものがないかを調べます。
尿と血液の分析によって、背景にある病気(基礎疾患)を特定できる可能性がありますので、ネフローゼ症候群の原因となりうる過去の感染症や、自己免疫疾患を示唆する自己抗体(自身の組織に向けられた抗体)について、血液検査を行います。超音波検査やCT検査などの画像検査、内視鏡検査によって悪性疾患の検索を行うこともあります。

ネフローゼ症候群の治療法

治療はむくみをコントロールする対症療法(1日6g未満の塩分制限、利尿薬の使用)と、原因治療(ステロイド薬、免疫抑制薬など)を行います。

ネフローゼ症候群によるタンパク尿が長期間続くと、腎機能が慢性的に低下する可能性があり、血中の免疫グロブリンも低下するため、感染症にかかりやすくなります。そのため、尿タンパクの減少と腎臓を保護する目的で、血圧を下げる薬(降圧薬:アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬)を使用することがあります。

発症や進行には、体内での免疫機構の異常が深くかかわりをもつことが認められているため、積極的に治療する際は、免疫機能を抑制する副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬などを使います。それでもタンパク尿が減少しないときには、ステロイド大量療法を行います。何度も再発を繰り返すような場合は、リンパ球を減らす作用のある新しい薬も使われるようになりました。

血清コレステロールが高いときには、コレステロールを低下させる薬を使います。また血栓症のリスクがある場合には抗凝固薬を投与することで、血栓形成を抑えるのに役立ちます。

一次性ネフローゼ症候群での薬物療法としてはステロイド薬が用いられることが多いですが、その反応性は病型や重症度によって異なります。二次性ネフローゼ症候群では、基礎疾患に対する治療が優先されます。例えば、糖尿病からくるものであれば、血糖コントロールは欠かせません。

早期発見のポイント

一次性ネフローゼ症候群は、体重の増加や手足のむくみによって気がつくことがあります。尿が泡立つことも特徴です。むくみ、全身倦怠感などを訴えて外来を受診した患者さんから、初診時スクリーニング検査でタンパク尿により発見されることが多いです。しかし自覚症状に乏しく、健康診断時、タンパク尿により偶然発見されるケースもあります。また、血液検査で低タンパク血症と高脂血症が同時に起こっているときは要注意です。
高齢者のネフローゼ症候群は、心不全と間違われることがありますが、これはどちらの状態でもむくみが認められること、高齢者では心不全がよくみられることが理由です。

二次性ネフローゼ症候群を疑う臨床症状としては、むくみ、タンパク尿に加えて、発熱、関節痛、日光過敏症、末梢神経障害、紫斑などが挙げられます。これらの症状がある場合には、膠原病、血管炎、アレルギー性疾患がきっかけで起こる二次性ネフローゼ症候群の可能性があります。

予防の基礎知識

発症する原因がはっきりとわかっていないため、厳密には予防できません。しかしながら、腎臓の糸球体が炎症を起こすことでタンパク尿が出るため、まずは腎臓に負担をかけないことが大切です。疲れを溜め過ぎないこと、塩分やタンパク摂取量を控えめにすることは、腎臓の負担を減らすために一定の効果があります。鎮痛薬を飲み過ぎないことも、日常生活の注意点として重要です。

「医学解説」で述べたように、ネフローゼ症候群は免疫グロブリンの低下で感染症にかかりやすくなります。特にステロイド薬や免疫抑制薬の投与を受けている患者さんは、細胞性免疫の低下が著しく、薬剤の合併症、特に感染症の予防およびその治療がとても重要です。そのため、患者さんには感染リスクに応じて、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザをはじめとする不活化ワクチンの予防接種が推奨されています。

また、尿中に多量のタンパクが漏れているため、有効循環血漿量が低下し、血液は濃縮されています。さらに、肝臓ではコレステロールや血液凝固因子の産生が過剰になり、加えてステロイド治療の影響で、血液は過凝固状態になってしまいます。この状態は深部静脈血栓症や、腎静脈血栓症を引き起こす危険があるため、抗血小板薬や抗凝固薬を服薬して血液の凝固を防ぎます。

諸々の治療によって、いったんタンパク尿が消えても、後に再発することもあります。退院してからも定期的に診察と検査を受ける必要があります。もし再発した場合には、早期に治療を始めなければなりません。ステロイドや免疫抑制薬など処方された薬剤の服用を欠かさないようにしましょう。

岡本 昌典

解説:岡本 昌典
済生会和歌山病院
腎センター部長

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