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神経調節性失神(反射性失神)

Naurally Mediated Syncope

解説:山﨑 純一 (鳥取県済生会境港総合病院 循環器内科副院長)

神経調節性失神はこんな病気

失神とは一過性に意識消失を起こす状態をいい、一時的に脳全体が必要とする血液が十分に行き届かなくなります。比較的速やかに数分以内で意識の回復がみられます。
前駆症状(以下に主な症状を記載)が多くの場合で現れますが、前駆症状がまったくなく突然失神を起こすこともあります。

前駆症状
頭が重たい、身体がふわふわ浮いた感じ、冷や汗をかく、ものが二重に見える、血の気が引いて気が遠くなる、腹が痛い、むかむかする、吐いてしまうなど

神経調節性失神には血管迷走神経性失神、状況失神、頸動脈洞症候群が含まれます。

血管迷走神経性失神 長時間立ったままや座ったままの同じ姿勢で仕事をしたり、
痛み刺激を受けたり、不眠や肉体的疲労が長く続いたり、
精神的恐怖を体験することが誘因となって起こる
状況失神 日常のある特定の動作(排尿、排便、飲み込み、咳き込みなど)の時に起こる
頸動脈洞症候群 衣服の着替えや重たい荷物の上げ下げで極端に首を回したり伸ばしたり、
またネクタイなどをきつく締めたりすることが誘因となって起こる

このタイプの失神は発症に自律神経反射が深く関与しています。自律神経は人間が生きていくために無意識のうちに心身の機能を調節する神経で、自律神経反射は自律神経によって起こる生体反応のことです(心臓を動かす、汗をかくなど)。
自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は、緊急時やストレス時にはたらき、心身を活発にする神経です。血圧を上げたり、心拍数を上げたりするはたらきがあります。副交感神経は、心身を休め回復させる、身体のメンテナンスを担う神経で、血圧を下げたり、心拍数を下げたり、消化管のはたらきを活発にするはたらきがあります。通常は交感神経と副交感神経がバランスを保って心身の機能を調節しています。

神経調節性失神はさまざまな誘因で交感神経と副交感神経(迷走神経)のバランスが悪くなり、交感神経抑制と迷走神経緊張が起こることで血圧が低下したり、脈が遅くなったり、あるいは両者が起こって失神に至ります。大多数が後遺症を残さない予後良好の疾患ですが、2~3年の間に3人に1人くらいの頻度で再発を認めます。

早期発見のポイント

早期発見のためには、失神は短時間で意識を回復し後遺症もないので、医療機関を受診しない方も多くいらっしゃいますが、まず前駆症状が出現したら前失神(失神に至らず、前駆症状のみの状態)でおさまった人も失神に至った人も、医療機関を受診して精密検査を受けることが重要です。
今後の適切な予防、治療を行うためには、どのような失神か知ることが必要です。

神経調節性失神の場合、確定診断には前駆症状の起こり方を主体とした詳細な病歴聴取とチルト試験、頸動脈洞マッサージが有用です。チルト試験とは、傾斜台に仰向けで安静にしたあと、傾斜台を起立させ受動的に立位状態を維持し、意識状態、血圧、心拍を観察する試験です。多くの場合、失神症状の誘発、収縮期血圧の60~80mmhg未満への低下、安静時と比べて20~30mmhgの収縮期血圧低下をもって陽性とします。

失神を起こす原疾患にはほかに起立性低血圧、不整脈をはじめとする心疾患、脳血管障害がありますが、このなかで心疾患に伴う失神は突然死など生命にかかわるような重大な結果をもたらすことがありますので、特に早期の診断と適切な治療が求められます。

※頸動脈洞マッサージ : 主に医師が患者に向けて行う頸部皮膚表面から頸動脈洞をマッサージする方法。患者の頭部を左側へ向け、甲状軟骨(声帯を守るように覆っている軟骨)上縁の位置で拍動を最も触知する頸動脈を探すことで右頸動脈洞を特定し、右手指を2本使って、頸動脈を押すように5~10秒間しっかりと上下にマッサージを行う。このマッサージを5~10秒間隔をあけて2~3回繰り返す。

予防の基礎知識

神経調節性失神と診断された患者さんに対しては、まず失神を起こさないための生活指導、増悪因子(症状を悪化させる要因)の是正が予防となります。自律神経活動のアンバランスで起こる病態を理解してもらい、普段の日常生活では、以下に列挙するような取り組みやすい予防法から実践することが大切です。

・特に夏場を中心として十分な水分をとり脱水を防ぐ
・長時間の立位・座位保持を途中でやめ、いったん姿勢を変える
・アルコールの多飲を避ける
・血管内の循環血液量を減らさないため極端な塩分摂取制限を行わない
・十分な睡眠をとり、規則正しい生活のリズムをつくる

さらに、個人個人によって過去に失神を起こした状況に相違を認めますので、あらかじめ失神を起こした状況と同じ状況を避けることが特に重要です。

先に記載しました前駆症状を自覚した場合には、その場で速やかに寝た姿勢やしゃがみこむ姿勢に体位変換をする、足踏みや足を交差する、手を力いっぱい握りしめることなどいわゆる失神回避方法が効果的です。

以上のような生活指導、増悪因子の是正によっても失神を繰り返す場合、薬物を使用せず自宅などの壁を利用して起立訓練を行う起立調節訓練、薬物療法、ペースメーカー治療などが適用されます。

※起立調節訓練 : 両足を15~20cmほど前方に出し、臀部、背中、頭部で後ろの壁に寄りかかる姿勢を30分間継続するもの。下肢筋肉をはたらかさないことが大切で、1日1~2回毎日繰り返す。

山﨑 純一

解説:山﨑 純一
鳥取県済生会境港総合病院
循環器内科副院長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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