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ナルコレプシー

Narcolepsy

解説:近藤 英明 (済生会長崎病院 睡眠医療センター長)

ナルコレプシーはこんな病気

日中の異常な眠気をきたす代表的な病気です。耐えられない眠気に襲われて寝てしまうことが、繰り返し出現します。例えば授業中に居眠りが目立つようになったり、バスや電車で寝てしまい終点まで行ってしまったりします。ある日から、これまで経験したことがない眠気にしばしば襲われるようになった場合には、ナルコレプシーを発症したことが疑われます。

笑った時などに力が抜ける脱力発作も、この病気ではしばしばみられます。この脱力発作は、うれしい時、得意気になった時、不意の出来事が起こった時、怒った時など、感情の変化が生じた時に出現するため「情動性脱力発作」と呼ばれます。眠気と脱力発作は必ずしも同時に認められるわけではありませんが、この2つの症状がある場合にはナルコレプシーが強く疑われます。

典型的なナルコレプシーでは脳内の覚醒を維持するためのオレキシン神経が減少、もしくは消失しています。オレキシン神経は、覚醒に必要な神経活動のほぼすべての手綱を引いています。そのため、この神経系が消失すると、起きている状態を維持することが難しくなります。また、オレキシン神経は夢をみている状態であるレム睡眠を抑えています。この歯止めがなくなり、夜間だけでなく日中にも容易にレム睡眠に移行するようになります。

レム睡眠中、筋肉は脱力状態となります。睡眠中のこの脱力状態はいわゆる「金縛り」と呼ばれるものです。金縛り状態でみている夢は「入眠時幻覚」と言われるほどの異常な体験となっていることがあります。情動性脱力発作は覚醒時にレム睡眠の神経回路の一部分が働くために出現します。そのため、「情動性脱力発作」「金縛り」「入眠時幻覚」は「レム関連症状」と呼ばれます。

ナルコレプシーの治療法

治療は「日中の過度の眠気」と「レム関連症状」の2つの主要症状に対して行います。眠気を軽減するためには覚醒維持薬が使用されます。情動性脱力発作を主体とするレム関連症状に対しては抗うつ薬が有効です。

早期発見のポイント

ある日を境に、日中の過度の眠気と情動性脱力発作が出現するのであれば、ナルコレプシーを発症したことが疑われます。これまでと同じような生活をしているにも関わらず、異常な眠気を経験するようになることがポイントです。診断の際には、眠気が生じる睡眠障害などの鑑別が必要です。日中に異常な眠気を繰り返し経験する場合には、睡眠障害の専門医を受診することをお勧めします。日本睡眠学会の専門医は同学会のホームページで公開されています。

診断の際には睡眠不足を十分に鑑別する必要があります。睡眠不足になると眠気が高まることは誰しも経験することです。睡眠不足が続くとナルコレプシーと同じように、日中の眠気だけでなく昼寝の際にも容易に夢をみるようになることがあります。この場合、検査結果からはナルコレプシーと同じような結果となることがありますが、十分な睡眠時間が確保されると、症状は軽快・消失し、検査結果も正常化します。

閉塞性睡眠時無呼吸障害の合併にも注意が必要です。睡眠時の無呼吸が頻回にあると、安定した睡眠が得られなくなり、日中に眠気が強くなることがあります。日本では閉塞性睡眠時無呼吸障害は広く治療可能な病気となっていますが、この病気に対する治療を行っていても十分に眠気が解消しない場合には、ナルコレプシーを含む過眠症の可能性も考える必要があります。

予防の基礎知識

特有の遺伝的背景を有する人が、何らかの感染等を契機にこの病気を発症することがわかっています。しかし、この遺伝的背景は日本人に広く認められるものであり、多くの方は発症するわけではありません。保険診療ではこの遺伝的背景を検査することはできません。現在のところ予防する手段は残念ながらありません。

発症後、病状を安定させるために、適切な薬物療法を行うことは欠かすことができません。症状の変化と、生活状況に合わせて薬剤を調整します。また、薬物療法に加えて、日常生活や夜間睡眠、昼寝の時間の確保にも留意することが大切です。

「ナルコレプシー及び関連過眠症患者とその家族等に対して、より治療が受け易く、患者が安心して生活出来る社会作りをすすめ、医療の発展に寄与すること」を目的とした患者団体として「NPOなるこ会」が活動しています。

近藤 英明

解説:近藤 英明
済生会長崎病院
睡眠医療センター長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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