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多発性硬化症

multiple sclerosis

解説:辻井 智明 (松山病院 神経内科)

多発性硬化症はこんな病気

視神経、脳、脊髄といった中枢神経系のあらゆる箇所に病変ができる病気です。症状は、病変ができる部位によって異なるために、視力障害、しびれなどの異常感覚、感覚鈍麻(かんかくどんま/感覚が鈍くなること)、麻痺など、非常に多彩です。そして、再発と寛解(かんかい/症状が落ち着いて安定した状態)を繰り返すため、治療に公費からの補助が受けられる、特定疾患に認定されています。特定疾患としての多発性硬化症には、「視神経脊髄炎」も含まれているので、ここでは合わせて解説します。

視神経脊髄炎は、元々「多発性硬化症」としてひとまとめに考えられていました。視神経と脊髄に病変が好発するタイプが日本などに多く、大脳に病変が好発するタイプが欧米に多いとされてきましたが、近年、視神経脊髄炎に特異的な抗体(抗アクアポリン4抗体)が発見され、別の疾患として分けて考えられるようになりました。症状はよく似ていますが、患者層、検査結果、症状の強さ、治療法などが異なることが分かってきたためです。

多発性硬化症と視神経脊髄炎の治療法

多発性硬化症と視神経脊髄炎は、急性期には症状をできるだけ速やかによくするための治療を行い、寛解期には症状を再発させないための治療を行います。
急性期においては、どちらの病気もステロイドを点滴する「ステロイドパルス療法」や、血漿(けっしょう)を健常なものに入れ替える「血漿交換療法」などが行われます。
寛解期においては治療法が異なります。多発性硬化症では、「インターフェロンβ」や冬虫夏草(とうちゅうかそう)というキノコの一種から作られた「フィンゴリモド」が用いられます。視神経脊髄炎では、「経口ステロイド」や「免疫抑制剤」の内服を行います。ちなみに視神経脊髄炎においては、インターフェロンβやフィンゴリモドを使用すると、かえって再発率が高くなると言われています。

早期発見のポイント

症状が多彩であり、どういう症状に注意すればよいかは、一概には言えません。
ただ、多発性硬化症も視神経脊髄炎も、脳梗塞ほど突発的ではありませんが、比較的急に症状が現れます。視力障害、麻痺、しびれなどが急に起こり、どんどん悪化してくるときは、早めに病院を受診してください。早期に治療を行うことで、後遺障害を少なくすることができます。

予防の基礎知識

多発性硬化症も視神経脊髄炎も不明な点が多く、予防法はまだ確立されていません。
ただ、多発性硬化症に関しては、人種間に発症率の差が見られるほか、高緯度の地域に移り住むと発症率が高くなると言われています。そのため、日照時間などとも関連するのではないかと言われていますが、はっきりとしたことは分かっていません。
ただし、再発予防に関しては、医学解説の項目で解説した薬を使用することで、再発率を減らすことができます。そのため、発症したら治療を継続していくことが重要です。

辻井 智明

解説:辻井 智明
松山病院
神経内科

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