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もやもや病

Moyamoya Disease

解説:稲葉 真 (済生会横浜市東部病院  脳神経外科・脳血管内治療科部長)

もやもや病はこんな病気

脳に血液を送る太い血管が少しずつ詰まってしまう、原因不明の病気です。日本人に多くみられますが、患者さんの数は人口10万人あたり6~10人程度と少なく、厚生労働省の指定難病になっています。
首から脳へは頚動脈という太い血管が走っており、脳の中に入っていくものを内頚動脈といいます。もやもや病では、この内頚動脈が脳の中に入った終末の所から徐々に細くなり、詰まっていきます。これにより脳は血流不足となるため、不足した血液を脳に送ろうと、代わりとして脳の底部に細い異常血管がたくさん発達して血液を送るようになります。この細いたくさんの血管がもやもやとして見えることから、もやもや病という名前がつきました。

もやもや病の仕組み もやもや病の仕組み

脳の血流が不足すると脳の虚血が起こり、また、その分の血液を送ろうともやもや血管に負担がかかり、血管がやぶれると脳の出血を起こします。

虚血の症状は手足の麻痺、感覚障害、ろれつがまわらない、言葉がでないなどで、一時的に血流が不足し、その後元に戻ると症状は改善します(一過性脳虚血発作)。ひどい血流不足が続くと、脳細胞が死んでしまう脳梗塞という状態になり、症状は戻らなくなります。

出血の症状は突然の頭痛、意識障害、半身の麻痺、感覚障害などで重症だと生命に関わることもあります。10歳以下の小児と30~40代の成人に発症することが多いです。小児は虚血が多く、成人は虚血も出血もきたします。また、その他の症状として頭痛やけいれん、小児では知能低下などもあります。

もやもや病の治療法

脳血管が徐々に詰まっていくのを治療する方法はなく、脳血流の不足を治す手術を行います。具体的には頭皮の血管を脳の表面の血管に直接つなげたり(直接血行再建)、頭部の筋肉や血管、脳や頭蓋骨を包んでいる膜などを脳表に接着させ、自然に血流が入るのを期待するものがあります(間接血行再建)。手術により脳の血流不足がなくなると、脳梗塞を起こさないだけでなく、もやもや血管もその役目を終えてなくなっていくので、もやもや血管がやぶれて脳出血を起こすことも少なくなります。

虚血症状で発症した方には、血管がつまらないよう血液をサラサラにする抗血小板剤という薬を使用することがありますが、もやもや病は脳出血も起こす病気ですので、慎重な治療が必要です。

早期発見のポイント

脳梗塞や脳出血を起こした部分の脳のダメージは元に戻りません。
一過性脳虚血発作であれば、ダメージを受けた部分は元に戻るので、この段階で医療機関を速やかに受診することがポイントです。

「医学解説」でも述べたように一過性脳虚血発作とは、一時的な脳の血流不足により症状がでたものの、血流が改善し症状が消失する発作です。通常発作は数分から数十分でおさまり、数時間以上続く場合は脳梗塞を起こしている可能性もあるため、救急受診が必要です。
もやもや病の初期に起こりやすい一過性脳虚血発作として、以下のものがあげられます。発作の度に、発作の起こる側が変わるのももやもや病の特徴です。

  • 片側の手と足に力が入らない(片麻痺)、片側の手もしくは足のみの脱力(単麻痺)、全身の脱力(四肢麻痺)
  • ろれつがまわらない(構音障害)、言葉がでない、理解できない(失語症)
  • 片側の顔面や手足のしびれ、感覚が鈍い(感覚障害)

特に小児では、これらの発作が以下の過呼吸となるような動作で引き起こされる特徴があります。

  • リコーダーや鍵盤ハーモニカなどの吹奏楽器を吹く
  • 熱い麺類などの食べ物をフーフーと冷ましながら食べる
  • 風船、風車、ストローなどを吹く
  • 大声で泣く、笑う、歌を歌う
  • かけっこやマラソンなど激しい運動をする

過呼吸で呼吸回数が増えると、吐く息から体内の二酸化炭素が体外へ排出されることで、血液中の二酸化炭素が減ってしまい発作が起こります。血液中の二酸化炭素は脳の血管を広げる役割をしているので、減少すると脳の血管は縮んでしまい、血流が減ってしまいます。もやもや病の方は、普段から脳血流が不足しがちなため、さらに減ると虚血の発作がでやすくなります。

過呼吸以外でも低血圧や貧血、脱水などによって、脳の血流不足から虚血発作が起こる可能性があり、これらは大人でも起こるため注意が必要です。
また、脳出血を起こすと突然の頭痛、吐き気、半身の麻痺などが生じますので、このような症状が出た際は救急を受診してください。

予防の基礎知識

もやもや病の原因はまだ解明されていません。したがって、発病を予防する方法はありません。患者さんの約10%は、ご家族の中に同じ病気の方がいらっしゃいます。また、最近この病気になりやすい遺伝子の異常が特定されるなど、遺伝的素因の関与も明らかになってきました。必ずしも遺伝する病気ではありませんが、ご家族の中にもやもや病の患者さんがいる方は、頭部MR検査を受けることをお勧めします。

既にもやもや病と診断された方で、虚血発作を起こしたが経過観察中という方、もしくは手術まで待機中の方は、「早期発見のポイント」で述べた過呼吸となる動作、脱水などを避ける注意が必要です。
無症状で経過観察中の方も、サウナや長時間の入浴、炎天下での活動などでは適宜水分を補給し、脱水にならないよう注意しましょう。専門の脳神経外科で定期的に頭部MR検査などを受けるようにしてください。
大人では、喫煙が脳の血管を収縮させるため、タバコを吸っているもやもや病の患者さんは禁煙に努めてください。アルコールは適量であればかまいませんが、過度の飲酒は脱水となるので注意しましょう。

脳出血でもやもや病が発覚した方は再出血防止のため、高血圧とならないよう医療機関で血圧の管理を受けてください。
脳梗塞でもやもや病が発覚した方は、上記の注意点以外に一般的な脳梗塞の予防の基礎知識を参照してください。
もやもや病は女性に多い病気で妊娠、出産中の脳出血で発症し、初めて見つかることもあります。しかし、すでに診断されている例では、多くの方が産科医と脳神経外科医の連携のもとに安全に出産されています。これから妊娠出産を控えている方は、このような連携ができる専門施設で行うことをお勧めします。

稲葉 真

解説:稲葉 真
済生会横浜市東部病院
脳神経外科・脳血管内治療科部長

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