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腸間膜動脈閉塞症

Mesenteric artery occlusion

解説:清水 哲朗 (富山病院 副院長・外科主任部長)

腸間膜動脈閉塞症はこんな病気

胃腸、肝臓、すい臓など食物を消化吸収する腹部内臓には、酸素や栄養を供給する動脈が3系統あります。このうち、小腸のほとんどと大腸の右側に供給するのが上腸間膜動脈、大腸の左側に供給するのが下腸間膜動脈です。この上下腸間膜動脈が突然詰まってしまうことを腸間膜動脈閉塞症と言います。発生する原因として、動脈硬化などにより元々狭くなっている血管に血の塊(血栓)が詰まる「血栓症」と、心臓の病気(心筋梗塞や心房細動など)により心臓から流れ出た血栓が詰まる「塞栓症」の2つがあります。
腸は、元々血流が非常に豊富で、血流の低下に敏感な臓器です。腸間膜動脈が閉塞すると、腸へ酸素や栄養が供給されなくなり、腸が壊死に陥り(腐ってしまい)、腹膜炎や腸閉塞を発症します。さらに、短時間のうちに細菌や毒素が全身に回り、ショック状態(血圧が低下し、全身の臓器に必要な血流が乏しくなる状態)から臓器不全をきたし、高確率で死に至ります。幸い命を救うことができても、壊死に陥った腸管を大量に切除せざるを得なくなります。そのため、水分や栄養を生涯点滴で補給しなくてはならない「短腸症候群」となったり、人工肛門が必要となったりします。
最近は、超音波検査やCTで診断可能となっているため、早期の段階で診断し、治療を開始することが重要です。初期であれば、開腹せずに血管内処置で血栓を溶解したり、血管を拡張したりする治療が可能です。閉塞後、約6時間以内なら血流が再開し、腸管切除を免れる場合もあります。

早期発見のポイント

50歳以上で、下記の病気がある場合は要注意です。

・血管が詰まる病気(心筋梗塞脳梗塞閉塞性動脈硬化症など)
不整脈
静脈血栓症
・血液が固まりやすい状態(がん、炎症性疾患、外傷など)

該当する方は、このような怖い疾患があり得ることを知っておいてください。
上記の危険因子がない場合や、危険因子を持っていることを本人や家族が知らない場合もあるので、何の前触れもなく突然激しい腹痛が起こった場合や、高齢者で急速に状態が悪くなる腹痛が起こった場合は、早急に手術が可能な病院へ搬送するべきです。
症状は、動脈が閉塞した早い段階から強い腹痛が生じますが、腹部所見は特徴的なものがなく、まずはこの病気を疑って腸間膜の血流を確認する検査(超音波検査、CT、血管造影)を行います。心房細動があって突然の激しい腹痛が起こり、この疾患であることが否定しきれなければ、血流確認検査で診断がつかなくても早期に手術するべきだとされています。

予防の基礎知識

突然起こって早期に死へ至りやすいため、普段から予防を心がけることが大切です。脳梗塞心筋梗塞と同じように、原因は動脈が詰まることなので、動脈硬化などの血管病や不整脈などの心疾患がある高齢者は特に注意が必要です。
まずは、水分を適宜とって、脱水にならないようにすることが大切です。定期的に検診を受け、コレステロールや中性脂肪などをチェックし、動脈硬化の進行を防ぐことも重要です。また、生活習慣病を防ぐためにも禁煙し、規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動を心がけましょう。
心房細動などの不整脈や心臓病、血管病がある場合はその治療を受けましょう。場合によっては、かかりつけの医師と相談して血液が固まりにくくなる薬(抗血小板薬あるいは抗凝固薬)を服用することも有効です。すでに血液が固まりにくくなる薬を服用している方は、勝手に休止することなく、医師の指示に従って服薬を続けましょう。

清水 哲朗

解説:清水 哲朗
富山病院
副院長・外科主任部長

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