ホーム >  症状別病気解説 >  リンパ浮腫

リンパ浮腫

Lymphedema

解説:三原 誠 (川口総合病院 血管外科 医長)

リンパ浮腫はこんな病気

リンパ浮腫とは、リンパ管を流れるリンパ液(たんぱく質や白血球を運ぶ)が滞ることで起こる、腕や足などのむくみです。リンパ管やリンパ節の発育不全といった先天的なことが原因で生じる場合と、乳がんや子宮がん、前立腺がんといったがん手術でリンパ節を取り除いたり、放射線治療によってリンパの流れが停滞したりすることが原因で生じる場合とがあります。

リンパ浮腫は免疫不全の状態であり、そのため、むくんでいる箇所にわずかな細菌が侵入しただけで一気に腕や足全体に広がり、炎症を起こしてしまいます。この状態を蜂窩織炎(ほうかしきえん)といい、リンパ浮腫の合併症状として最も避けたい症状といえます。

リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎

リンパ浮腫患者の約30%に発生するといわれている蜂窩織炎は、健常人に発生する蜂窩織炎と異なり、免疫機能異常を有しているリンパ浮腫症例においては、浮腫部に突然の発赤が生じ、急激に進行し数時間内にあっという間に40度近い発熱を発生します。また、場合によっては、敗血症性ショックで命を落とす場合もあります。
特に、蜂窩織炎を頻発する患者さんは、度重なる欠勤のため就労困難となり、仕事を辞めざるをえない状況に追い込まれたり、浮腫部に過度な負担をかけることを避けるため、旅行やスポーツといった活動が制限されたりすることも少なくありません。蜂窩織炎が出現している状況では、スキンケアやマッサージといったリンパ浮腫の保存療法は禁忌とされているため、病状は著しく悪化し続けます。

リンパ浮腫の治療法

近年、病態の解明に加えて、検査法、手術方法、手術器具の進歩により、これまで不治の病とされたリンパ浮腫の治療、蜂窩織炎の予防が可能になってきました。新しい治療として、手術用顕微鏡を用いた低侵襲リンパ外科治療と保存療法(複合的理学療法)を融合させることで、より確実な治療効果が得られています。

早期発見のポイント

従来の検査方法であったリンパシンチグラフィに加え、新たにインドシアニングリーン(ICG)を用いた蛍光造影検査法が開発され、早期段階からリンパ浮腫の確定診断が可能となり、また、残存するリンパ機能の評価も可能となってきました。これまでリンパ浮腫の治療は、画一的な治療が適応されてきましたが、これからは患者さんごとにリンパ機能を判断し、保存療法や外科治療、場合によってはこれらを組み合わせた治療といった最善の治療を選択することができるようになりました。以下に、リンパシンチグラフィ、インドシアニングリーン(ICG)リンパ管蛍光造影法を簡単に説明します。

リンパシンチグラフィ(従来のリンパ管造影検査)
全身および深部のリンパ管走行や、残存するリンパ機能が解析できます。

インドシアニングリーン(ICG)リンパ管造影法(最新のリンパ管造影検査)
表在のリンパ管走行描出や、残存するリンパ機能をリアルタイムで解析できます。手術部位の決定を行うと共に、リンパ機能の現状を患者さんにも理解してもらうことができます。なお、ヨード造影剤にアレルギーがある方は実施できません。

予防の基礎知識

リンパ浮腫を完全に予防することは難しいですが、乳がんや子宮がん、前立腺がんなどのがん手術や放射線治療を受けたあとは、特に以下の症状に注意をしましょう。

1 皮膚が腫れぼったい感じがする。押すと痕が残る。
2 手や脚がだるい・重い感じがする。
3 手や脚を動かすときに違和感がある。
4 血管が見えにくくなってきた。
5 洋服の袖口や裾がきつい。

また、リンパ浮腫に合併する蜂窩織炎に対して、これまで予防法は無いとされてきましたが、「リンパ管静脈吻合術」による蜂窩織炎発生抑制効果に関して解析したところ、下図に示すような有用な結果が得られました。この治療の効果は少数の症例に限ったものではなく、95症例を解析した医学的な根拠に基づいたものです(Mihara, Hara, Kikuchi et al. British Journal of Surgery, 2014 Oct.)。症例の内訳は、上肢リンパ浮腫11例、下肢リンパ浮腫84症例です。術前1年間の蜂窩織炎の平均発生頻度1.46回だったものが、術後1年間では0.18回まで低下しています。つまり、蜂窩織炎の発生頻度が約1/8まで減少したことになります。これまで抗生物質の数年にわたる継続内服や理学療法のみが蜂窩織炎予防の手段であったため、この結果は画期的なものとして国際的にも認められつつあります。

「リンパ管静脈吻合術」による蜂窩織炎発生抑制効果
「リンパ管静脈吻合術」による蜂窩織炎発生抑制効果

リンパ浮腫の悪化に伴って、蜂窩織炎の発生頻度も上がりますが、リンパ機能が少しでも残っていれば、重症の病期でも蜂窩織炎発生を予防することができます。国際リンパ学会によるリンパ浮腫分類のStage3(象皮病)においては、リンパ管静脈吻合術前1年間の蜂窩織炎平均発生頻度が4回だったものが、術後には平均0.62回と、約1/6に低下しています。
リンパ浮腫は早い段階であれば、根治を目的とした治療法が確立されてきています。前述のようなリンパ浮腫の疑いのある症状が出たら、すぐに専門医を受診しましょう。

三原 誠

解説:三原 誠
川口総合病院
血管外科 医長

関連情報

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

▲ページトップへ