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下肢静脈瘤

lower extremity varicose vein

解説:斎藤 聰 (山口総合病院 外科部長)

下肢静脈瘤はこんな病気

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは、足の静脈がこぶのようにふくれる病気です。日本では1000万人以上の患者さんがいると推測されていますが、年齢や体質のせいだと諦め、病院を受診せずに我慢して過ごしている人が多いと思われます。命に関わることは滅多にありませんが、自然に治ることはなく、徐々に進行して足を悪くしていくこともあるため、注意が必要です。
血管には動脈と静脈があり、血液は肺で酸素を含んだ後に心臓から送り出され、動脈を流れて目的の場所まで運ばれます。それぞれの部位に到達した後は、静脈を通って心臓まで戻ります。水道に例えるならば、動脈は上水道、静脈は下水道です。足の血液は、重力のために心臓まで戻りにくく、足の静脈に血液がたまりやすくなっています。しかし、歩いたり足を動かしたりすると、足の筋肉がポンプのように動いて静脈の血液を送り出します。さらに、血液が重力で逆流しないように、静脈には無数の「逆流防止弁」がついており、心臓に向かってのみ血液が流れるようになっています。こうして、静脈の血液は心臓まで戻ることができるのです。ところが、老化、出産、肥満、立ち仕事、遺伝、体質などの原因で弁が正常に働かなくなると、血液が心臓に戻れず、足の静脈にどんどんたまってふくらみ、こぶになってしまいます。

下肢静脈瘤の症状

最初は、毛細血管が浮き出ている程度ですが、次第に静脈がこぶのようにふくらんできます。その次は、足に血液がたまった「うっ血」という状態のために、徐々にむくみやだるさ、こむら返りといった症状が出てきます。こぶが破れて、出血したり炎症を起こしたりして赤く腫れて痛むこともあります。さらに、足がうっ血して負担のかかった状態で長い年月が経つと、皮膚が黒くなったり、かゆみが続き皮膚がぼろぼろになって穴が開いたり、汁が出てきたりすることもあります。
下肢静脈瘤は、単なる美容上の問題だけでなく、前述のような足全体に悪影響を及ぼす可能性があることは意外と知られていません。悪化するとなかなか治らないため、早めの対処が望ましいです。

下肢静脈瘤の治療法

基本的に下肢静脈瘤は自然には治らず、徐々に悪化していくことがあり、薬でも治りません。足を強く圧迫する「弾性ストッキング」を着用することは、うっ血やむくみを減らす効果があります。有用な方法ですが、根本的な治療ではありません。「ストリッピング手術」という治療法は、皮膚に数センチの傷を何カ所かつけて、原因となっている静脈をストリッパーというワイヤーを用いて引き抜くという方法です。100年以上前から行われてきた治療法ですが、少ない再発率と安定した効果で、現在でも標準の手術法です。

近年増加中の血管内レーザー治療

「血管内レーザー治療」とは、2002年ごろより下肢静脈瘤の治療に取り入られるようになった治療法です。原因となっている静脈に、レーザーファイバーという管を入れてレーザーの光を照射し、血管を内側から焼いてつぶすという方法です。傷がほとんどつかず、局所麻酔や日帰り手術が可能です。日本では、2011年1月から保険の適用内で診療が受けられるようになり、今後ますます普及していくと考えられています。

早期発見のポイント

以下の症状がある方は下肢静脈瘤の可能性があるので、外科、心臓血管外科、専門医などに相談してください。

・足の血管(静脈)がふくれている
・夕方になると足がむくんでだるくなる
・夜、寝ていると足がつる
・足の皮膚が黒ずんできた
・足の皮膚に湿疹ができてかゆみがある
・足の皮膚に穴が開いて治らない

進行すると皮膚が黒くなったり、かゆみが続いて最後には皮膚がぼろぼろになって穴が開いたり(皮膚の表面にできた傷が深くえぐれたようになった状態)することもあります。症状がひどくなるとなかなか治らないため、早めに対処しましょう。

予防の基礎知識

医学解説の項目で解説したように、足の静脈は血液がたまりやすくなっています。歩いたり足を動かしたりすることで、足の筋肉がポンプのように動いて静脈の血液を送り出したり、無数についた「逆流防止弁」が、心臓に向かってのみ血液が流れるように作用しています。しかし、弁が正常に機能しなくなると血液が逆流して心臓に戻れず、足の静脈にどんどんたまってふくらみ、こぶになってしまいます。
以上のことから、長時間の立ち仕事や、座ったままで足を垂らしたまま過ごしていると、足に血がたまり、静脈瘤になりやすく、また悪化しやすくなるので、足を高くして休むとよいでしょう。また、発症した後は、喫煙、肥満、運動不足は静脈瘤を悪化させるため、生活習慣に気をつけましょう。入浴時は、皮膚に傷がつかないように優しく足を洗って清潔に保ちます。足がかゆいからといってかきすぎると、湿疹(しっしん)になったり、傷からバイ菌が入ったりして急激に悪くなることもあるので要注意です。

斎藤 聰

解説:斎藤 聰
山口総合病院
外科部長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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