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不妊症(女性)

Infertility

解説:長谷川 功 (新潟第二病院 産婦人科部長)

不妊症はこんな病気

妊娠は、(1)精巣で精子が作られ、膣内に射出、(2)精子が子宮内に侵入、(3)卵巣で卵子が成熟し排卵、(4)卵子が卵管に取り込まれ、精子も子宮から卵管へ、(5)卵子と精子が出会って受精、(6)受精した胚が卵管から子宮に運ばれて着床、という過程が全てうまく運んで成立します。(1)の異常が男性因子(30%)、(2)が頚管因子(3%)、(3)が排卵因子(25%)、(4)が卵管因子(12%)、(6)が子宮因子(5%)で、(3)~(6)に関与しうる子宮内膜症(10%)もあり、このほか通常の不妊検査で異常が指摘されない原因不明(15%)不妊と、これら7通りに不妊症の原因は区分されます(図1)。( )内の数字は当院における各原因の頻度です。最多の原因は男性因子であり、不妊の検査では夫の精液検査を早めに行い、夫婦を系統的に調べることが大切です。


図1 不妊症の検査・治療の流れ


不妊症の治療は、図1のように5種類に大別できます。(1)タイミング法、(2)排卵誘発、(3)人工授精、(4)内視鏡手術、(5)体外受精・顕微授精です。(1)は、超音波による卵胞径の計測と、排卵指令のホルモン(LH)の検査を組み合わせて排卵日を予測し、性交日を指示するものです。(2)では、内服(クロミフェンなど)や注射(FSH製剤)の排卵誘発剤を投与して卵胞を成熟させ、次いでLH(HCG)を投与して排卵を惹起します。(3)は精子数や運動率が不良なケースに対して、精液を洗浄・濃縮して得られた良好精子を排卵日に子宮内に注入するものです。原因不明不妊に対して(2)と併用して行われる場合もあります。(4)には、内視鏡をおへその所から腹腔内に挿入し、子宮・卵管を観察するとともに、癒着剥離や、子宮内膜症病巣の除去等を行う腹腔鏡と、子宮に内視鏡を挿入し、子宮内の筋腫やポリープを切除する子宮鏡があります。(5)は不妊症の最終的治療法です。排卵誘発剤(FSH)で卵巣に複数の卵子を発育させ、これを膣から穿刺し採取します。この卵子を夫の精子とともに37℃の培養装置内で育て、得られた胚を子宮内に移植するのが体外受精です。精子が極端に少ない場合、卵子に直接精子を注入する「顕微授精」が併用されます。多胎防止のため、体外受精の移植胚数は原則1個ですが、余剰胚は凍結保存でき、妊娠不成功の場合のバックアップとなります。敢えて全ての胚を一旦凍結して、後日子宮の状態を整えて移植した方が妊娠率が上がる場合もあり、現在体外受精の妊娠の約6割は凍結胚の妊娠となっています。

早期発見のポイント

 わが国での不妊症の定義は「結婚後2年間妊娠しない場合」ですが、WHOではこの期間が1年となっています。後述するように妊娠のしやすさは女性の年齢に大きく左右されます。34歳以下の方なら結婚後2年間様子をみてよいですが、35歳以上の方は1年間、38歳以上の方なら半年間妊娠しない場合が受診のタイミングかもしれません。
 未婚の方でも次のような症状がある場合は、一度産婦人科に相談された方がよいでしょう。まずは月経不順です。月経周期がいつも45日以上すなわち半月以上遅れるような場合は、時々ホルモン補充を行って整調な月経を起こす必要があります。次に年々増強する月経痛です。最近増加している子宮内膜症の症状である可能性があります。未婚者の場合、内視鏡などの手術が選択される場合は少なく、排卵を止めるようなホルモン治療で病変の縮小を図ることが中心になります。
 最近、抗ミュラー管ホルモン(AMH)という検査が注目されています。AMHの値は卵巣にどれくらい卵子が残っているかを反映します。34歳での平均値が2.5ng/ml位です。この値が低いからといって妊娠しにくいとは即断できませんが、この数値より低いような場合は、早めに妊娠を計画した方がよいとは言えそうです。自費で7,000円位で検査できます。

予防の基礎知識

 何と言っても夫婦仲良くすることが最も大切です。お互いを尊敬するとともに、いつも魅力的でいるよう努力しましょう。不妊外来では、私の見立てと実際の排卵日が違っていることも多々ありますが、仲の良いご夫婦ならその日も性交渉をされていて妊娠が成立したりします。
次に生活習慣では、たばこは妻、夫とも即止めましょう。お酒は適度ならよいと思います(飲まない先生は止めろと言うかもしれません)。女性に太りすぎ、痩せすぎがある場合、食事・運動習慣などを見直し、体重の適正化に努めてください。腹部、下半身の冷えも要注意です。男性は局所が過熱されるような状況、例えばきついブリーフの着用や、熱いお風呂に長時間入る等、を避けてください。
 妊娠のしやすさは年齢に明らかに反比例します。図2は当院の不妊外来を受診された方の初診時の年齢群別に、どれくらいの方が出産に至ったかを示しています。30代前半なら大多数の方が赤ちゃんを抱くことができます。40代では妊娠しても流産に泣かされるケースも多くあり、挙児達成率は低くなります。社会的な諸事情があって簡単ではないでしょうが、女性が30歳までに最初の出産を、35歳位で最後の出産をする、そして40代後半~50代には子どもも手も離れバリバリ仕事をして管理職として輝く、そんな社会の到来を期待します。安倍総理も唱える「女性の輝く社会」は適齢期に妊娠・出産してこそ実現可能でしょう。

年齢群別にみた不妊症例の挙児達成率
図2 年齢群別にみた不妊症例の挙児達成率

妊孕性は知性に比例せず、情報を沢山集めて研究すれば妊娠するものでもありません(医療者は日々勉強ですが)。細かいことに拘泥せず、肩の力を抜いて気楽に赤ちゃんを待ちましょう。不妊治療のシンボルでもある基礎体温は診療の参考になり有用ですが、つけることにストレスを感じるようなら、休んでもよいと思います。最後に一句、「難しく考えぬほど妊娠し(いさを)」。

長谷川 功

解説:長谷川 功
新潟第二病院
産婦人科部長

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