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カンピロバクターによる感染性胃腸炎

Infectious Gastroenteritis Caused by Campylobacter

解説:村中 裕之 (熊本病院 TQM部 感染管理室・医療安全管理室・品質管理室 室長)

カンピロバクターってどんな菌?

カンピロバクターとは、ニワトリやウシといった家禽(かきん)・家畜をはじめ、ペット、野鳥、野生動物などあらゆる動物が持っている細菌です。食中毒の原因菌として有名で、乾燥にとても弱く、通常の加熱調理で死滅することが知られています。

人への感染は、カンピロバクターに汚染された食品・飲料水の摂取や、動物との接触によって起こります。中でも、鶏肉からの感染が多く、そのほとんどが生や加熱不足の鶏肉を食べることによって発生しています。このほか、殺菌が不十分な井戸水の飲用による感染事例なども報告されています。

一般的に、細菌が原因の食中毒は、10万~100万個の菌を摂取しないと感染しませんが、カンピロバクターの場合は、100個程度と比較的少ない菌量の摂取で感染することが分かっています。また、日本で発生している食中毒の中で最も発生件数が多く、患者数も平成20年は、ノロウイルスに次いで2番目に多くなっています。

カンピロバクター食中毒の発生状況(平成13年~平成20年)

平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年 平成20年
事件数(件) 428 447 491 558 645 416 416 509
患者数(人) 1880 2152 2642 2485 3439 2297 2396 3071
患者1名の事件数(件) 322 327 341 422 428 236 201 210

カンピロバクターによる感染性胃腸炎の症状

ほかの細菌による食中毒症状と同様に、下痢、腹痛、おう吐などの症状がみられます。特徴的な症状としては、頭痛に代表される中枢神経症状があるといわれています。また、潜伏期間が1~7日間とやや長いことも特徴です。患者の多くは1週間程度で回復し、死亡例や重症例はまれです。しかし、子どもや高齢者、その他抵抗力の弱い人は重症化する可能性が高いので、注意が必要です。また、感染の数週間後に手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合もあります。

カンピロバクターによる感染性胃腸炎の治療法

下痢やおう吐などによる脱水症状に対しては、水分や塩分などをこまめに摂取するようにしましょう。病院では、腸内の菌を殺す抗菌薬や、腸内環境を整える整腸剤を組み合わせた薬が処方されます。下痢が起こるため、自己判断で下痢止めを服用してしまうこともありますが、下痢を止めることによって、細菌を体の外に排出する働きを妨げてしまうので、安易に下痢止めを使用するのはやめましょう。

早期発見のポイント

早期に発見することは難しいですが、まずは鶏肉の喫食歴の有無を確認することが大事です。カンピロバクターは、感染すると下痢や腹痛、おう吐などの症状が出ます。1週間程度で回復し、死亡例や重症例はまれですが、感染の数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合もあります。下痢や腹痛といった食中毒症状と入れ替わりで、手足のしびれなどを感じたら、早期に医師に相談するようにしましょう。

予防の基礎知識

肉にしっかりと火を通しましょう

家禽(かきん)や家畜は、健康な状態でも体内にカンピロバクターをはじめとする食中毒菌を持っていることが知られています。カンピロバクターによる感染性胃腸炎は、食肉の加熱不足や二次汚染された食材によって引き起こされることがほとんどです。原因食品としては、鶏レバーやささみの刺身、鶏のたたきといった半生製品が疑われています。また、牛生レバーも原因食品として挙げられます。

カンピロバクターによる感染性胃腸炎の予防には、食肉を加熱調理(中心部を75℃以上で1分間以上加熱)し、細菌を死滅させることが大事です。また、カンピロバクターに汚染された食品からの二次汚染を防止することも大切です。そのためには、菌をほかの食品に移さないよう以下のような工夫をしましょう。

二次汚染の予防法
・食肉とほかの食品とで調理器具や容器を分け、処理・保存を行う
・食肉を触ったあとは、手を洗ってからほかの食品を触る
・食肉の調理に使用した器具は、使用後、洗浄・殺菌を行う

村中 裕之

解説:村中 裕之
熊本病院
TQM部 感染管理室・医療安全管理室・品質管理室 室長

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