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イレウス(腸閉塞)

ileus

解説:田中 賢治 (済生会長崎病院 外科部長)

イレウス(腸閉塞)はこんな病気

「イレウス」は日本語では「腸閉塞」と訳しますが、本来は消化管の内容物が流れなくなっている病態を意味しており、閉塞していなくても腸管の通過障害があれば「イレウス」と呼びます。症状としては、腹痛、吐き気・嘔吐、腹部膨隆(ふくぶぼうりゅう/お腹が膨らんでいること)、排便・排ガス停止などが挙げられます。

最も頻度が高いものは「癒着性(ゆちゃくせい)イレウス」であり、イレウス(腸閉塞)にかかる患者さん全体の6割近くを占めています。「癒着性イレウス」とは、癒着や索状物によって腸管が折れ曲がったり狭くなったりして、消化管の内容物が流れなくなる状態です。過去に、腹部の手術歴がある方、腹部外傷の経験がある方、胃潰瘍穿孔(いかいようせんこう/胃潰瘍によって胃に穴があくこと)などで腹膜炎を起こされた方などは、「癒着性イレウス」を発症する可能性があります。特に、腹部手術を受けられた方は、今まで調子がよかったとしても突然発症することがあるので、頭の片隅にでもとどめておきましょう。
次に多いイレウス(腸閉塞)は、がんなどの腫瘍によるもので、頻度は1割強です。

頻度は少ないですが、宿便による腸閉塞状態、いわゆる「糞便(ふんべん)イレウス」もあります。便秘が続いて便の量が増え、大腸は弛緩・拡張し、そのうち便意がなくなってきます。また、たまった便は大腸による水分吸収でさらに硬くなっていきます。そのため、ますます排便が困難になるという悪循環に陥る状態です。
石みたいに硬くなった便が長時間大腸の壁を圧迫することで、潰瘍を形成したり、腸管の壁に穴が開いたりすることがあります。また、宿便による閉塞で、拡張した大腸が壊死することもあります。いずれも非常にまれなケースですが、高齢の方、寝たきりの方や持病がある方は注意が必要です。

腸管閉塞に加え、腸管の血行障害を伴っている場合は「絞扼性(こうやくせい)イレウス」と呼びます。原因として、癒着、ヘルニア嵌頓(かんとん)、腸重積、腸軸捻転などがあります。血行障害が続けば腸管が壊死するので、早期の治療が必要です。また、習慣的な便秘により弛緩・拡張した大腸がねじれ、「絞扼性イレウス」を起こすこともあります。

早期発見のポイント

腹痛、吐き気・嘔吐、腹部膨満感(お腹が張ること)などの症状とともに、排ガス・排便が止まると、この病気を疑わなければなりません。吐物に便の臭いがすれば、進行している可能性があります。急激に発症して強い痛みが持続する場合は、血行障害を伴っている「絞扼性イレウス」の可能性が高いです。反対に、排ガス・排便が安定していれば、イレウス(腸閉塞)ではないか、もしくは軽症であることが多いです。
上記の症状がある方は、すぐに近くの病院を受診してください。過去に腹部手術を受けられた方は「癒着性イレウス」の可能性があるので、特に注意してください。診断のためには、腹部の診察や血液検査のほか、レントゲンなどの画像診断を行います。

イレウス(腸閉塞)は通院治療では治らないばかりか、悪化することもあるので、診断がつけばそのまま入院します。そして、通過障害により拡張した腸管を減圧させる治療を開始します。
まず、飲食を断ち、輸液を行います。脱水や電解質バランスの補正が必要なこともあります。血行障害により腸管が壊死した場合は、緊急手術となります。
病変が小腸にあるときは、鼻から長いチューブを消化管に挿入し、内容物をゆっくり吸引する治療が行われます。多くの場合、この治療で改善します。しかし、この治療を5日ほど続けても改善がみられないときは、手術を検討します。最終的に手術が必要となる方はイレウス(腸閉塞)の患者さん全体の3割程度です。
病変が大腸にある場合は、大腸内視鏡などによる処置を行うことがあります。

予防の基礎知識

イレウス(腸閉塞)にはさまざまな原因があり、中には大腸がんなど予防できない場合もあります。ここでは最も頻度の高い「癒着性イレウス」の予防について、一般的な便秘対策とともに述べたいと思います。

排便を安定させるためには以下のことが大切です。

・排便習慣をつけること。
・便が硬くならないようにすること。
・腸管の動きを正常化させること。

上記のために必要な一般的な便秘対策としては、以下の7点があります。

1 規則正しい生活を心がける。

2 食事は朝・昼・夕と一日三食とる。

3 食物繊維が多いもの(穀類、豆類、キノコ類、イモ類、海藻、コンニャクなど)を積極的に摂取する。

4 水分を十分にとる。

5 適度な運動をする。

6 睡眠を十分にとる。

7 消化管に負担がかかる熱すぎるもの、冷たすぎるもの、刺激物はとらないようにする。

それでも便秘が改善しない方は、近くの病院で医師に相談してみましょう。

しかし、過去に「癒着性イレウス」にかかった方は、上記2、3に該当する食事の内容・仕方を変更しましょう。そのような方は、消化管に"狭い部分"が存在しているかもしれないので、"詰まる"可能性がある消化が悪い食事は避けてください。消化が悪いものとしては、食物繊維が多いもの、貝類、脂肪が多い肉類などがあります。また、よく噛んで、ゆっくり食べるようにしてください。食べ過ぎもよくありません。したがって、1回の食事量を減らし、食事の回数を増やして間食をとるようにしてください。
「癒着性イレウス」にかかったことがある方には、予防目的に腸管ぜん動(腸管の収縮運動)を改善する内服薬を処方することがありますので、かかりつけの医師とよく相談しましょう。

田中 賢治

解説:田中 賢治
済生会長崎病院
外科部長

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