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特発性過眠症

Idiopathic Hypersomnia

解説:近藤 英明 (済生会長崎病院 睡眠医療センター長)

特発性過眠症はこんな病気

慢性的な睡眠不足がない状況下においても、強い日中の眠気のために日常生活に支障をきたす病気です。原因が明らかにされているわけではないため「特発性」と呼ばれます。過眠症の一つであるナルコレプシーでは、「レム関連症状」と呼ばれる「情動性脱力発作」「金縛り」「入眠時幻覚」をしばしば経験しますが、特発性過眠症はレム関連症状に乏しいことで区別されます。
この病気では、よく眠ることが幼少時期から目立ち、10代で日中の眠気が問題となることがほとんどです。発症時期は明確に特定することは困難で、症状はほとんどの症例で長期化します。過眠傾向が家族内で目立つこともあり、原因は特定されていませんが、睡眠・覚醒に関わる何らかの遺伝的背景がこの病気に関わっていることが考えられています。
昼寝の効果はナルコレプシーと特発性過眠症とでは、やや違っています。ナルコレプシーでは比較的短時間の眠りで一旦眠気は軽快することがほとんどですが、その後、しばらくして再び耐えがたい眠気に襲われることが特徴的です。その一方で、特発性過眠症の中で睡眠時間が比較的長い人では、短時間の居眠りでは眠気を持ち越してしまい、一度に長く寝てしまう傾向があります。

特発性過眠症の治療法

日中の過度の眠気に対しては覚醒維持薬を使用します。薬物療法だけでなく、十分な睡眠時間を確保することも含めた生活上の注意も大切です。睡眠時間を確保することで、日中の眠気の軽減が得られることがあります。しかし、現代の日本では勤務者のみならず、学生時代から夜間睡眠を十分に確保することが困難なことが多く、職場や学校の協力が不可欠です。

早期発見のポイント

主たる症状は日中の過度の眠気です。睡眠時間を確保しているにも関わらず日中の眠気が続く場合には、特発性過眠症を含めた過眠症を診断するために睡眠障害の専門医を受診することをお勧めします。日本睡眠学会の専門医は同学会のホームページで公開されています。

予防の基礎知識

日中の眠気が問題となる病気の原因を考える際に、自分の必要な睡眠時間を理解しておくことが重要です。人に必要とされる睡眠時間は平均8時間前後と言われています。しかし、短時間睡眠でなんら問題ない人もいれば、長い睡眠時間を必要とする人もいます。十分に長い睡眠時間を確保すると、日中は眠気の問題はなく日常生活をおくることができるのであれば、その人は長時間睡眠者、もしくはその傾向があると判断されます。

世界でもっとも睡眠時間が短い日本では、長時間睡眠者は容易に睡眠不足症候群に陥る危険性があります。中学校、高等学校へ進学するにつれて、睡眠不足の影響は長時間睡眠者に重くのしかかり、しばしば日中の過度の眠気のため居眠りが頻回となります。就職してからは長時間労働のため睡眠時間が削られて、眠気による作業効率の低下や仕事上のミスのため、仕事の継続が難しくなることもあります。睡眠不足により学校生活・社会生活を含む日常の活動に支障をきたしている状態は、睡眠不足症候群と診断されます。

長時間睡眠者の睡眠不足症候群による眠気が高まっているのかどうかは、十分な睡眠時間を2週間前後確保して初めて判断できます。睡眠不足症候群では睡眠時間が確保されると眠気が解消します。しかし、実際にはこの睡眠時間を確保することに苦労する場合が多く、特発性過眠症と長時間睡眠者の睡眠不足症候群とを明確に鑑別できないことがあります。

近藤 英明

解説:近藤 英明
済生会長崎病院
睡眠医療センター長

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