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ギラン・バレー症候群

Guillain-Barré Syndrome

解説:松谷 学 (済生会小樽病院 神経内科・診療部長)

ギラン・バレー症候群はこんな病気

脳や脊髄から体の各所に電線のようにめぐっている神経(末梢神経)が原因で、急に発症し、数日で次第に手足が動かなくなる病気です。

神経は、様々な情報を送り出す神経細胞の軸索(じくさく)突起を、情報の伝達スピードを速める髄鞘(ずいしょう)がとりまく構造をしています。ギラン・バレー症候群の多くは、本来体外から侵入してくる外敵(ウイルスなど)に立ち向かうはずの免疫システム(抗体など)が、何らかの理由で自己の末梢神経を攻撃して髄鞘に障害が起き、神経の命令の伝導が障害されることで、手足の麻痺などの症状が出ます(図参照)。髄鞘は回復機能が高いため、治療により免疫システムを正常に戻せば、神経の伝導も回復するとされています。しかし、神経軸索突起までダメージが及んでしまった場合、神経細胞の回復は非常に遅いので回復に時間がかかります。

発症前には上気道炎や胃腸炎などの症状が多く見られ、ウイルスや細菌の感染が引き金になることが多いと考えられています。

治療は、免疫システムを正常に戻すことを目指して行われます。正常な抗体を大量に点滴する免疫グロブリン大量静注療法、神経を障害している抗体を取り除く血漿浄化療法が主な治療法です。

図: 神経細胞の仕組み
図: 神経細胞の仕組み

早期発見のポイント

「医学解説」でも述べたように、手足が数日かけてだんだん動かなくなります。手足の麻痺は上肢から始まる場合も下肢から始まる場合もあり、眼や顔面、口などがうまく動かないこともあります。

上記は主に運動神経が障害されたことによる症状です。感覚神経が障害された場合は、知覚の障害、重症例では自律神経が障害され、体温や発汗、消化管、血圧や心臓に症状が出る場合もあります。特に急速に麻痺が進行する例や、呼吸筋にまで症状が及ぶ呼吸不全(呼吸ができなくなる)例は、進行の抑制と早期改善が必要です。

予防の基礎知識

はっきりとした予防法はまだ明らかになっていません。「医学解説」で述べたように、胃腸炎や感冒(風邪)などの感染が引き金になっているようなので、それらに対する予防が大切です。しかし、感染症の症状がない場合でも、発症することがあります。小児から成人、老人まで男女年齢を問わず、かかる可能性のある病気です。

現在は症状を軽減する治療法が複数あるため、「早期発見のポイント」で述べたような症状が出た場合は、神経内科の専門医がいる医療機関を受診し、早期診断と治療をお勧めします。神経内科では神経学的診察のほか、神経の伝わり方を調べる検査、脳や脊髄を包んでいる液(髄液)を検査して診断します。完全な手足の麻痺や、人工呼吸器が必要なほどの呼吸筋の麻痺にまで至ると、回復には時間がかかります。早期からのリハビリテーションも含めて、総合的な治療が必要です。

大部分の症状の進行は1カ月以内に止まり、かなり進行したとしても、時間とともにゆっくり回復していきます。体に症状が出たときと比べて、回復の時間が非常にかかる病気です。リハビリテーション施設や在宅医療、訪問看護など、多くのスタッフの関与を含めて根気よく治療を継続することになります。神経の分布は全身に至るため、リハビリテーションは手足の訓練のほか、呼吸筋や口、喉の筋肉にも症状が及んでいる場合は、飲み込みや言葉の発声の改善訓練を行い、日常生活のサポートの方法も指導します。

まれに、何らかの後遺症が残る場合や、自律神経の障害にまで及び心臓循環・呼吸の症状等から死に至る超重症例もありますが、多くは時間をかけて少しずつ回復していきます。何度も繰り返して麻痺の症状が出たり、再度悪化するようなことはないとされています。

解説:松谷 学
済生会小樽病院
神経内科・診療部長

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