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十二指腸潰瘍

Duodenal Ulcer

解説:伊藤 秀一 (済生会有田病院 院長)

十二指腸潰瘍はこんな病気

食物は口腔(こうくう)、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸の順に通過し、消化吸収されて便となり、排泄(はいせつ)されます。十二指腸は上腹部の胃と小腸の間にあり、指を12本並べたくらいの長さであることからこのように呼称されます。十二指腸潰瘍とは、強い胃酸が十二指腸粘膜を傷つけ、深い傷となっている病態です。

症状としては、上腹部(通称みぞおち部位)の疼痛(とうつう/うずくような痛み)や出血、潰瘍が深い場合には十二指腸に穴があく穿孔(せんこう)などがあり、腹膜炎を起こしてしまう場合もあります。

十二指腸潰瘍

1 上腹部痛の特徴
胃潰瘍の痛みが食後3~4時間で起こるのに対し、十二指腸潰瘍の痛みは空腹時に起こるのが特徴です。すなわち午後5~6時ごろや深夜に、毎日のように襲ってくる疼痛が特徴的です
2 出血の症状と治療
症状として吐血(コーヒーかす状の嘔吐物(おうとぶつ))や下血(純黒色のコールタール様泥状便)があれば、出血量は多量で輸血や胃カメラを用いた内視鏡治療が必要となります
3 十二指腸穿孔
大砲の弾が腹腔(ふくくう)内で破裂したような激烈な痛みがあり、十二指腸に穴があくと、食物が腹腔内に漏れます。これは腹膜炎を起こした状態なので緊急手術が必要となります

治療は潰瘍治療薬(PPI製剤)による内服治療が主流です。十二指腸潰瘍は治癒してもまた再発することが多く、以前には外科的手術療法もかなり行われてきましたが、現在では十二指腸穿孔などの限られた特殊な病態のみでしか行いません。

早期発見のポイント

数日間にわたって続く空腹時の腹痛を自覚した際は、消化器内科を受診しましょう。病院でもクリニックでもかまいません。消化器内科を受診すれば、上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸を連続して検査できる内視鏡で、通常胃カメラ検査と呼ばれています)を勧められます。深夜に胃痙攣(いけいれん)のような上腹部痛をきたす胆石症などもありますので、腹部超音波検査(エコー検査)も勧められるかもしれません。両検査とも絶食状態で検査しますので、食物を摂取せずに消化器内科を受診してください。十二指腸潰瘍であればほとんどの場合、胃の出口直後の胃酸が直接当たる十二指腸球部前壁に潰瘍病変を容易に見つけることができます。

病変を見つけるための胃カメラ検査

胃カメラ検査は苦痛を伴うという考えから、受診しない方もいらっしゃると思います。しかし、経鼻内視鏡といった苦痛の少ない胃カメラもありますし、5~10分くらいで検査は終了します。筆者は健康診断目的で、年に1回胃カメラ検査を受けていますが、麻酔薬でうがいをするだけで胃カメラを飲み、検査直後から外来診療ができるほど体への負担は少なくて済んでいます。

ただ、胃カメラ検査に恐怖を感じている方も多いと思います。そういう方は医師に相談してください。静脈麻酔剤を使用してくれると思います。麻酔薬を血管注射するため、眠ったように意識のない状態で胃カメラ検査を受けることができます。問題点は、麻酔薬の副作用(呼吸抑制など)が出る場合があることです。静脈麻酔剤を使用した場合は、検査当日に車・バイク・自転車の運転はできません(麻酔薬を中和する薬剤もありますが、効果が一定しない場合があります)。

予防の基礎知識

十二指腸潰瘍と食事の問題はずいぶん昔から論じられてきましたが、十二指腸潰瘍を予防する効果のある食事方法は見つかっていません。すなわち、十二指腸潰瘍は食事内容によって予防することができないということです。また、これまでストレスとの関係も論議されてきましたが、この多忙で競争的な現代の環境の中でストレスを避けることは不可能でしょう。しかし、最近は十二指腸潰瘍の発症と密接に関係しているピロリ菌という細菌の研究が進んで、ピロリ菌を除菌すると、かなりの高確率で十二指腸潰瘍が予防できることが分かってきました。

十二指腸潰瘍はいったん治癒したとしても、非常に再発しやすい病気です。何回も再発して潰瘍の傷跡(瘢痕組織)が多くなると、十二指腸内腔が狭くなり、食物の通過が困難になることもあります。潰瘍の再発を防ぐには、胃酸をおさえる潰瘍治療薬(PPI製剤またはH2ブロッカー製剤)をずっと服用し続けねばなりませんでした。しかし、ピロリ菌を除菌することで、潰瘍の再発率が著しく低くなることが分かってきました。またピロリ菌は胃潰瘍胃がんと関係があることも分かっています。

ピロリ菌の除菌治療について

ピロリ菌を除菌するためには、以下のような形での治療法が一般的なものとされています。

1 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)、血液検査、呼気検査などでピロリ菌の感染を診断します
2 抗生物質2剤とPPI製剤、合わせて3剤を1週間服用します。下痢やじん麻疹などの副作用が出ることもあります。下痢をしやすい体質の方は、最初から整腸剤を同時に服用されるとよいでしょう
3 除菌治療終了後2カ月の期間を置いてから呼気テストを用い、除菌判定をします。除菌治療終了後短期間での判定や呼気テスト以外での判定は偽陰性となりやすいので、注意が必要です。除菌成功率は約80%と高率です

消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)の患者さんや、既往者(潰瘍の経験者)にはピロリ菌の除菌をお勧めします。

伊藤 秀一

解説:伊藤 秀一
済生会有田病院
院長、医学博士、消化器病学会指導医、消化器内視鏡学会指導医、超音波医学会指導医

有田病院 内科 有田病院 病院長のプロフィール

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