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発達障害

Developmental Disorder

解説:土田 治 (飯塚嘉穂病院 副院長・消化器病センター長・心療内科)

発達障害はこんな病気

発達障害は、対人コミュニケーション能力の低下や、問題解決能力、臨機応変さ、想像力や気を利かせる能力の低下などを認めるものの総称です。一般的に知的レベルは問題なく、特定の分野においては逆に優秀な人が存在することもあります。"空気を読めない人"もこれに当てはまる可能性があります。知的レベルは正常なので、学業成績などは問題なく、社会人になってから初めて異常が見つかり診断されるケースが増加しています。症状は適応障害と類似する部分が多いですが、環境のストレスにより発症する適応障害とは異なり、発達障害は幼児期から学童期に発症するという点で異なります。
発達障害には、自閉症(AD)、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などがありますが、最近の診断分類(アメリカ精神医学DSM-V)では、自閉症とアスペルガー症候群を合わせて自閉スペクトラム症に統一されて分類されています。各々の特徴については以下のとおりです。

①自閉症
一つの物事に異常に執着し没頭する、同じ行動を何度も繰り返す、常同思考で考えが変えられないなどが特徴です。常同思考とは、どんなことに対しても同じ考え方をするということです。会話によるコミュニケーションが困難で、環境の変化を嫌い臨機応変に行動できず、予期せぬ出来事が起こった時にパニックになります。知的障害を併発することもありますが、暗記力や計算力などに並外れた能力を持つこともあります(サバン症候群)。

②アスペルガー症候群
基本的には自閉症と同様に常同思考がありますが、知能が正常もしくは高いことが特徴です。相手の気持ちをくみ取ることが出来ず、言われた言葉を文字通りに受け取ります。場の雰囲気を読むことや、他人に気を遣うこと、人の顔色を読むことが苦手で、冗談、慣用句、友情や愛情表現が理解するのが難しいなどの特徴があります。学業成績は優秀なことから診断が難しく、社会人になってから初めて診断されることもあります。

③注意欠如・多動性障害
不注意、衝動性、多動性が特徴で、落ち着きがなくじっとしていることができません。興味を持ったものには集中できますが、そうでないものには注意力が続かず、頭に浮かんだことを即座に行動に移すため、行き当たりばったりの行動が目立ちます。金銭管理や片付けが苦手で、感情のコントロールができないためすぐに感情的になる、といった特徴があります。

④学習障害
「読む」「書く」「計算する」などの基本的な学習能力のうち、特定の能力に困難さを伴うのが特徴です。文字を読んで発音がうまくできない読字の障害、文字が正しく書けない書字表出の障害、計算がうまくできない算数の障害などがありますが、いずれも知的障害を伴うものではありません。

早期発見のポイント

①自閉症・アスペルガー症候群
1歳を越えたあたりから、人の目を見ることが少ない、指差しをしない、ほかの子どもに関心がない、などの特徴が現れます。保育園や幼稚園で一人遊びが多く集団行動が苦手ということで発見されます。また、成長すると以下のような特徴も出てくるので、チェックしてみてください。

・自分の話したいことしか口にしない
・会話がつながりにくい
・自分の好きなことや興味のあることは、毎日何時間でも熱中できる
・初めてのことが苦手で、慣れるまで時間がかかる
・決まっていたことの変更が苦手

②注意欠如・多動性障害
7歳までに、多動性、衝動性、あるいは不注意の症状が現れます。多動性と衝動性の症状には以下のものがあります。

・座っていても手足をもじもじする
・席を離れる
・おとなしく遊ぶことが難しい
・じっとしていられずいつも活動する
・しゃべりすぎる、順番を待つのが難しい
・他人の会話やゲームに割り込む

不注意の症状には、以下のものがあります。

・学校の勉強でうっかりミスが多い
・課題や遊びなどの活動に集中し続けることができない
・話しかけられていても聞いていないように見える
・やるべきことを最後までやりとげられない
・課題や作業の段取りが下手
・整理整頓が苦手
・集中力が必要なことを避ける
・忘れ物や紛失が多い
・気が散りやすい

③学習障害
全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみが難しく、学業成績や日常生活に困難が生じます。小学校2~4年生頃に成績不振などをきっかけに気づくことがあります。

予防の基礎知識

発達障害は、治療や介入せずに放置すると二次障害が起こることが知られています。二次障害はうつ病やひきこもり、不登校などへの進展などがあります。早期に発見して治療に取り組むことで、二次障害を予防しましょう。

・自閉症、アスペルガー症候群
幼児期に診断された場合には、個別や小さな集団での療育を受けることによって、コミュニケーションの発達を促すことで適応力が育まれることが期待できます。療育とは、障害を抱えた子どもに対して行われる医療と教育のことです。療育によって新しい場面に対する不安が減り、集団活動に参加する意欲が高まります。言葉によるコミュニケーションに頼りすぎず、視覚的な手がかりを増やすなどの環境面の工夫をすれば、子どもの不安が減って気持ちが安定し、パニック状態の出現が少なくなることが期待できます。睡眠や行動の問題が著しい場合には、薬の服用について医師と相談してみましょう。
思春期以降になって不安症状やうつ症状が現れた場合には、抗不安薬や抗うつ薬を服用すると改善することがあります。その場合でも、症状が現れる前に過度なストレスがなかったか、生活上の変化がなかったかなど、まずは環境の調整を試みることが大事です。

・注意欠如・多動性障害
幼児期や児童期に診断された場合には、薬物療法や生活環境の調整が行われます。薬物療法としては、脳を刺激する薬が用いられます。
生活環境の調整としては、集中力を妨げる刺激をできるだけ周囲からなくすことが重要です。また、集中しないといけない時間は短めに、一度にこなさなければいけない量は少なめに設定し、休憩をとるタイミングをあらかじめ決めておくことも効果的です。
多動症状は、一般的には成長とともに軽くなる場合が多いですが、不注意や衝動性の症状は半数が青年期まで、さらにその半数は成人期まで続くと報告されています。また、思春期以降になってうつ症状や不安症状を併発する人もいます。

・学習障害
学習障害の子どもに対しては、教育的な支援が重要になります。読むことが困難な場合は大きな文字で書かれた文章を指でなぞりながら読んだり、書くことが困難な場合は大きなマス目のノートを使ったり、計算が困難な場合は絵を使って視覚化するなどのそれぞれの症状に応じた工夫が必要です。親と学校が子どもが感じている困難さを正しく理解し、子どものさぼりだと思わずに適切な支援の方法について情報を共有することが大切です。

せんせい

解説:土田 治
飯塚嘉穂病院
副院長・消化器病センター長・心療内科

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