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拡張型心筋症

Cardiomyopathy

解説:三田村秀雄 (東京都済生会中央病院 心臓病臨床研究センター長)

拡張型心筋症は、心臓の筋肉を収縮する機能が低下して、左心室が拡張する心筋症の一つです。悪化すると心不全や不整脈を起こします。国内の患者数は約2万人と言われています。原因は明らかになっていませんが、ウイルス性の心筋炎がきっかけで発症する可能性が高いと言われています。ほかに、免疫異常や遺伝などが考えられています。

ウイルス性の心筋炎にかかると、風邪をひいて1週間ぐらいして急に胸が苦しくなったり、息苦しくなったりします。風邪のウイルスが心臓に感染するわけですが、半数は風邪が治れば回復します。しかし中には、慢性的に進行して拡張型心筋症になる場合があります。拡張型心筋症になっても症状に気づかない場合もあり、診断されていないケースが少なくないようです。

1 息切れ・動悸
2 足や顔のむくみ

健康診断や人間ドックなどで心電図に異常が認められたり、X線で心臓の異常が見つかったりすることがあります。
 拡張型心筋症は初期段階でさまざまな症状が見られますが、一番多いのは息切れです。心臓から全身に血液を送り出すポンプ機能(図4)が低下すると、肺や全身でうっ血が起こります。すると、例えば坂道や階段を上っていて、息切れを感じるようになります。初めは身体を動かすときだけ息切れがしますが、病気が進行すると、じっとしていても息苦しくなります。また、睡眠時でも呼吸困難になります。
 足や顔のむくみも拡張型心筋症ではしばしば見られます。
 呼吸困難、むくみはどちらも心不全の症状です。心不全は、心臓のポンプとしての機能が低下するために、身体のいろいろなところに「水」がたまります。足にたまればむくみとして現れ、肺にたまれば息切れなどとして現れます。初期の段階では、息切れがしても、運動不足と思ったり、また、咳き込んだりしても、風邪と勘違いすることがあるようです。なお、むくみは心臓だけでなく腎臓、肝臓の病気でも見られることがあります。
 拡張型心筋症では、不整脈が現れることがあります。不整脈によって動悸を感じるほか、致死性心室性不整脈が起こると失神や、ときには突然死に至る場合があります。収縮力が低下した心臓では、血流が悪くなって血栓ができやすくなります。血栓が脳に流れていって脳血管が詰まり、脳梗塞になる危険性もあります。

拡張型心筋症の診断

胸部X線像では心臓の拡大が見られ、心電図にはさまざまな異常所見が現れます。心エコー検査では、心室壁の動きの低下も認められます。
 心臓にストレスがかかったときなどに、心臓からホルモンの一種であるBNPが出てきます。BNPを測定することで心臓の状態を知ることができます。
 なお、拡張型心筋症の診断は、虚血性心筋疾患などの特定心筋疾患による心筋異常を除外して行われます。また心臓カテーテル検査で心臓の動きを調べ、確定診断を行います。さらに、心筋生検で組織像を調べて原因を解明することもあります。

拡張型心筋症の治療法には、塩分制限に加えて、薬物療法と非薬物療法があります。心不全に対しては薬物療法が行われます。少量のβ遮断薬が有効であることがわかっており、多くの患者さんに投与されています。また、ACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬も改善効果が認められ、β遮断薬と併用して使われています。水分が貯留するケースでは、利尿薬が使われます。
 不整脈を合併する重症な患者さんには、不整脈の薬剤が処方されます。薬以外の治療法として最近注目されているのは、再同期療法といって、ペースメーカーを使った治療法です。心臓の収縮が均一でない場合にペースメーカーを使って心臓の右側と左側が同時に収縮するようにします。また、不整脈による突然死を予防する目的で植え込み型除細動器が使われることもあります。

拡張型心筋症の予後

拡張型心筋症は慢性的に進行することが多く、心不全による入院を繰り返したり、不整脈で突然死を来すことがあります。欧米では心移植が必要となるケースが増えていると言われています。わが国では心移植適応例の80%以上が拡張型心筋症です。その一方で、近年の治療法の進歩もあり、5年生存率は80%へと改善しています。

三田村秀雄

解説:三田村秀雄
東京都済生会中央病院
心臓病臨床研究センター長

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