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心房中隔欠損症(ASD)

Atrial Septal Defect

解説:坂本 知浩 (済生会熊本病院 心臓血管センター・循環器内科部長)

心房中隔欠損症はこんな病気

心臓の上方に存在する左右の部屋(心房)を隔てる壁(心房中隔)に穴が存在する状態を指します。子どもの先天性心疾患のうち、最多の頻度で見つかる心室中隔欠損症の3分の1程度の頻度ですが、成人になって見つかる先天性心疾患の中では、20~30%と最多です。 2:1の割合で女性に多く発生することが知られています。

幼小児期はほとんど症状がなく、他の先天性心疾患に比べて心雑音も目立たないことから、ほとんどの場合大人になるまで気づかれずに経過します。成人になって発見される最も多いパターンは、検診で「心臓が大きい」と指摘されることです。症状としては動悸や体を動かすときの息切れ、顔のむくみなどがありますが、自覚症状が出現するのは40歳を過ぎてからのことがほとんどです。

心房中隔欠損症は、左心房を通過する血液の一部が、左心室ではなく右心房を経由して右心室に流れます。これによって右心室に多くの血液が流れ込み、さらにその血液は肺動脈に向かいます。肺動脈には健常者の2倍から数倍に及ぶ血液が流れるため、放置すると肺動脈の血圧の上昇(肺高血圧)が生じます。

心房中隔欠損症
心房中隔欠損症

心房中隔は、胎児期には一次中隔及び二次中隔に分かれていて、この二つの中隔の間に生理的に隙間(卵円孔)が空いている状態で、通常、卵円孔は出生後に自然に閉鎖します。心房中隔欠損症は、この二つの心房中隔の発生過程で生じた異常によって起こります。穴の位置によっていろいろな種類に分類されますが、最も多いタイプは二次孔開存型と呼ばれるもので、全体の70%を占めます。二次孔開存型の多くは、カテーテルを使用して血管(太ももの静脈)から穴をふさぐための栓(現在、2種類の閉鎖栓が国内で発売され、いずれも健康保険が適用されます)を心臓内に運び、欠損部をふさぐ治療が可能です。

早期発見のポイント

検診などで心拡大や心電図異常(多くは完全右脚ブロック※1心房細動)を指摘されたら、必ず専門医を受診しましょう。聴診や心臓超音波検査を受けることで、比較的簡単に疾患が見つかります。前述したカテーテル治療が可能かどうかは、さらに詳しく経食道心臓超音波検査※2を受けることにより判定されます。

※1完全右脚ブロック: 右脚(右心室を収縮させる役割を果たす組織)が機能低下を起こしている状態
※2経食道心臓超音波検査: 食道から心臓の裏側を見ることで、通常では見えない部位を観察し、心臓の状態をより詳細に知ることができる検査方法

予防の基礎知識

先天性の疾患であるため、予防は困難です。
「医学解説」にあるように、心房中隔欠損症は肺動脈に大量の血液が流れ込むことで、肺高血圧が生じます。一定のレベルを超えて肺高血圧が進行すると、右心房から左心房に血液が逆流するようになり、手術やカテーテルによる治療は困難になるため、早期の発見が望まれます。一般に25歳までに欠損孔を閉鎖すれば、健常者と変わらない生命予後が期待されます。

坂本 知浩

解説:坂本 知浩
済生会熊本病院
心臓血管センター・循環器内科部長

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