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大動脈疾患

Aortic Disease

解説:伊東 啓行 (福岡総合病院 心臓血管・大動脈センター 外科主任部長)

大動脈疾患はこんな病気

大動脈は、心臓から直接分岐する身体の中で最大の血管であり、血液循環の大本です。通常、胸部大動脈は直径2~3cm、腹部大動脈は直径1.5~2cmほどの太さです。大動脈の病気はさまざまありますが、「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)」と「大動脈解離(だいどうみゃくかいり)」の2つが代表的です。

大動脈瘤とは、動脈硬化をはじめとしたなんらかの原因で大動脈の直径が拡大し、こぶ状になった状態です。胸部大動脈では直径4cm、腹部大動脈では直径3cmを超えると大動脈瘤と診断します。
多くの場合、動脈瘤はゆっくりと大きくなるため、自覚症状がほとんどありません。腹部大動脈瘤の場合は、へそのあたりに脈を打つように拍動するしこりが触れることがあります。しかし、胸部大動脈瘤の場合は、胸の中にあるためにレントゲン写真を撮って初めて異常を指摘されることがしばしばです。非常に大きな胸部大動脈瘤では、声帯の神経を圧迫して声が枯れたり、食道を圧迫して食べ物が飲み込みにくくなったりすることもあります。

大動脈瘤の部位による分類
大動脈瘤の部位による分類

大動脈瘤が恐れられるのは、前触れなく破裂をきたし、大量出血から死につながることがあるためです。胸部大動脈瘤では直径5~6cmを、腹部大動脈瘤では直径4~5cmを超えると破裂の危険性が高いと考えられますが、破裂の時期を予測することは困難です。残念ながら現在大動脈瘤に対して有効な薬剤はありません。治療は破裂の危険性が考えられる場合に、予防的に手術(人工血管置換術、あるいはステントグラフトと呼ばれる人工血管を挿入するステントグラフト留置術)を行うことが勧められます。

一方、大動脈解離とは、大動脈の壁を構成する「中膜(ちゅうまく)」と呼ばれる部分に亀裂が入り、大動脈が縦方向に裂ける病気です。急激に発症することが多く、「急性大動脈解離」と呼ばれます。突然の胸の痛み、背中の痛みをきたすことが多く、急性心筋梗塞と並んで緊急の治療が必要な疾患です。また、大動脈解離は動脈壁が分離しますが、その分離の仕方によっては、胸の痛みに加えて手足の痛み、腹痛などさまざまな症状が出現することがあります。心臓の上部から伸びている上行(じょうこう)大動脈に解離をきたした場合(A型解離)では、心臓周囲に出血して生命に危険を及ぼす可能性が高いため、緊急手術が必要となります。その場合、心臓手術が可能な施設に搬送する必要があります。上行大動脈に解離が及んでいない場合(B型解離)では、基本的に血圧を下げる治療を行いますが、最近ではステントグラフト治療の有効性も報告されています。

大動脈解離の分類
大動脈解離の分類

早期発見のポイント

大動脈瘤は基本的に無症状なので、症状から早期発見するのは難しいことがあります。大動脈瘤の発症は50歳台からみられ、加齢とともに発症率は高くなります。また、女性に比べて男性の発症率が高いことが知られています。
腹部大動脈瘤の場合は、腹部エコー検査で容易に診断することが可能ですので、50代以上の男性で、特に高血圧の人、タバコを吸う人は、検診で一度腹部エコーを受けることをお勧めします。一般に、検診の腹部エコー検査では、肝臓や胆のうの検査にとどまることが多いので、腹部大動脈を診てもらうことを忘れずに伝えてください。
胸部大動脈瘤の場合は、胸部CT検査を行わないと診断が困難です。検診などの胸部レントゲン検査で異常を指摘されたら、積極的にCT検査を受けてください。

大動脈瘤と診断された場合や疑われた場合には、まずCT検査が勧められます。これによって正確な大動脈瘤の大きさがわかり、どの程度破裂の危険性がありそうかが判断されます。破裂の危険性がまだ低いと判断された場合であっても、定期的に経過観察のための検査を受けてください。大動脈瘤は決して小さくなることはなく、徐々に増大します。治療の適切なタイミングを逃さないようにしましょう。

大動脈解離は大動脈瘤よりも発症年齢が低く、急に胸の痛み、背中の痛みを感じたときは、すぐに心臓血管疾患の専門医を受診してください。心筋梗塞と並んで突然死の原因となる疾患です。

予防の基礎知識

多くの大動脈瘤は動脈硬化より発症すると考えられていますので、まずは動脈硬化の進行を予防することが大事です。そのためには禁煙や、バランスのよい食事をとること、適度な運動をすること、高血圧糖尿病・コレステロールなど血液中の脂質が増加する脂質異常症などの生活習慣病を早期発見し、適切に治療することなどが重要です。また、大動脈瘤は家族内で複数人発症することがあります。近親者が大動脈瘤を発症したことがある場合は、一度CT検査や超音波検査などを受けることをお勧めします。

一方で大動脈解離は、必ずしも動脈硬化より発症するわけではありませんので、予防することは非常に難しいのが実情です。ただ、高血圧を合併することが非常に多いので、血圧が高い人は適切な治療を受けてください。

伊東啓行

解説:伊東 啓行
福岡総合病院
心臓血管・大動脈センター 外科主任部長

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