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円形脱毛症

Alopecia Areata

解説:安藤 佳洋 (大阪府済生会中津病院 皮膚科部長)

円形脱毛症はこんな病気

毛髪が抜ける病気ですが、年齢は幼児から高齢者まで、症状は軽症から重症まで、広い幅があります。円形に1ヶ所抜けた場合は単発性通常型、脱毛斑(はん)が複数できると多発性通常型、頭部全体に及ぶと全頭型、眉毛・睫毛・体毛まで抜けると全身型または汎発型になります。また、側頭から後頭部の生え際が帯状に脱毛する蛇行型もあります。数週間で自然に治る方がいる一方で、治療しても効果がなく生涯にわたり脱毛が続く場合もあります。幼少期から始まった方、アトピー性疾患を合併している方、蛇行型・全頭型・全身型は難治です。

単発性通常型 多発性通常型 全頭型 全身型(汎発型) 蛇行型
単発性通常型 多発性通常型 全頭型 全身型(汎発型) 蛇行型
毛髪に脱毛斑が
1ヶ所できる
毛髪に脱毛斑が
複数できる
頭部全体に及ぶ 毛髪・眉毛・睫毛・体毛まで及ぶ 側頭から後頭部の
生え際が帯状に
脱毛する

円形脱毛症の原因

ストレス・神経障害・内分泌異常など様々な説が唱えられていますが、最近は自己免疫が原因である説が有力です。脱毛部を顕微鏡で調べると、血管から皮膚に集まったリンパ球(白血球の一種)が成長期の毛根を攻撃しているようなことがみられます。リンパ球に攻撃された毛は萎縮して成長が止まり、抜けていきます。

免疫とは、細菌やウイルスなどの外敵を認識して排除する生体の防御システムです。生物は自分の体(自己)とそうでないもの(非自己)を見分ける仕組みを持っています。しかし、何らかの理由でこの自己・非自己の認識が乱れると、自分のリンパ球が本来ならば攻撃の対象となってはいけない自分自身の成分を攻撃するようになります(自己免疫反応)。このように自分で自分を攻撃することが原因となる病気を、自己免疫性疾患と言います。

攻撃される対象が毛根の場合には脱毛症になりますが、ほかにも多くの自己免疫性疾患があります。皮膚のメラニン細胞が攻撃されると、色が抜けて白斑(白なまず)になります。天疱瘡では表皮が攻撃され、全身に水ぶくれができます。皮膚以外にも甲状腺の病気・血液の病気・神経の病気・関節リウマチなどの膠原病も自己免疫性疾患の一つです。

家族内に自己免疫性疾患が多発することもまれではなく、免疫の調節異常をきたしやすい遺伝的素因があると考えられています。しかし、双子(一卵性双生児)でも一方のみに生じることがあり、遺伝的素因のみではなく後天的な環境・外的因子も関与しています。

円形脱毛症の治療法

脱毛斑が数個までの通常型円形脱毛症は数カ月で自然に治ることも多いですが、育毛剤やステロイド剤を塗って、回復を早める治療を行ないます。時に、通常型脱毛症でも長いこと発毛しない、発毛しても再び脱毛する方もいます。

脱毛が広範囲にわたる多発型・全頭型・全身型・蛇行型は難治です。100%有効で、しかも副作用のない治療法は現在のところ残念ながらありません。ステロイドの外用、漢方薬・血管拡張剤の内服などは大きな副作用はありませんが、効果も不確実です。ステロイドの内服は効果が非常に高い代わりに、長期間の内服は様々な副作用の危険性があり、避けたい治療法です。最近では、SADBE 又は DPCP という化学物質を塗って人工的に接触皮膚炎(かぶれ)を起こさせる治療法(局所免疫療法)が試みられるようになり、優れた効果があることがわかってきました。

他に皮膚に浸潤してきているリンパ球の機能を抑制する紫外線照射療法、ドライアイスや液体窒素を外用する冷凍療法などがあります。

早期発見のポイント

男性型脱毛・加齢性脱毛は徐々に進行し、いつのまにか頭全体が薄毛になっていきますが、円形脱毛症は突然発症します。初めてできた単発型の円形脱毛症では自然治癒も多く、しばらく様子を見てもよいでしょう。多発型や過去に円形脱毛症の経験がある方は、早めに受診することをお勧めします。

予防の基礎知識

原因として、自己免疫異常を起こしやすい体質(遺伝的素因)がありますが、円形脱毛症は遺伝病ではなく、伝染性疾患やビタミン等の栄養素欠乏症でもありません。脱毛の家族歴・既往歴のある方はストレスを避け、睡眠を十分にとり、バランスのよい食事をとるなど、通常の健康的な生活をおくることが大切です。

安藤 佳洋

解説:安藤 佳洋
大阪府済生会中津病院
皮膚科部長

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