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急性腎不全

Acute Renal Failure

解説:岡本 昌典 (済生会和歌山病院 腎センター部長)

急性腎不全はこんな病気

何らかの原因によって腎臓の機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下し、その結果、体液の量を一定に維持できなくなった状態です。腎臓には本来、血液中の老廃物や余分な水分を尿という形で体外に排泄するはたらきがあります。急にこれらの機能が低下すると、過剰な水分の蓄積や電解質※1の異常を招き、生命に危険を及ぼす重篤な状態になります。近年は手術や重症の感染症によって、全身の様々な臓器が障害を受ける多臓器不全の一部として発症することが多くなっています。

症状としては、尿量の減少あるいは無尿、血尿、褐色調の尿、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、意欲減退、痙攣(けいれん)などがあります。医療機関で採血した結果、急性腎不全と診断される場合もあります。原因は様々ですが、大きく3つに分類され (表1参照)、この分類は治療法にも深く関連しています。

※1電解質:血液や体液に含まれる物質で、腎臓のはたらきによって体内で一定の量を保っている


表1:急性腎不全の原因

    ①腎前性(腎臓への血流の低下):
    全身の血液の循環が悪くなることで、腎臓に流れ込む血液量が減少し、血液をろ過する機能が低下している状態

    <症例>

  • 出血、下痢、多量発汗、嘔吐、熱傷などによる循環血液量の減少
  • 心筋梗塞、心筋炎、心不全などによる心臓のポンプ作用の低下
  • 利尿薬、非ステロイド系消炎鎮痛薬などによる腎血流量の減少など

  • ②腎性(腎臓の細胞障害):
    腎臓そのものが障害を受け、機能が低下している状態

    <症例>

  • 急性糸球体腎炎、急性間質性腎炎などの腎臓自体を侵す病気
  • 薬物、造影剤、毒物などの有害物質
  • 重篤な全身性の感染症によって障害を受け、腎臓のはたらきが停止するなど

  • ③腎後性(尿路の閉塞):
    腎臓でつくられた尿を体外へ排泄するための経路(尿管、膀胱、尿道など)が閉塞し、腎臓に尿が溜まって腎機能が低下している状態

    <症例>

  • 尿路結石、腫瘍、前立腺肥大症などによる通過障害で、腎臓が拡張した水腎症
  • 神経因性膀胱による排尿障害

急性腎不全の治療法

適切な治療を行って腎臓の機能を悪化させた原因を取り除くことができれば、回復する可能性があります。多くの場合、入院して治療を受ける必要があります。原因に対する治療を第一に行い、腎機能が回復するまで、腎不全によって破綻した体内の内部環境を維持することが重要です。また、腎機能障害が高度の場合には、血液浄化療法(人工透析)を実施しながら、原因に対する治療を行います。


表2:原因ごとの治療法

原因 症例 治療法
①腎前性 脱水、大量出血などによる循環血液量減少 適切な輸液、輸血
心不全などの症例 心拍出量を増加させるカテコラミンなどの昇圧剤の服薬
②腎性 急速進行性糸球体腎炎、急性間質性腎炎 ステロイドを中心とした強力な免疫抑制療法
薬剤など 原因薬剤の服薬中止
③腎後性 尿路閉塞 原因除去(尿路結石、腫瘍、前立腺肥大症などの治療)、尿管カテーテル挿入・腎瘻造設などによる閉塞の解除

いずれにしても、原因に対する治療を行わなければ自然回復できず、慢性腎不全に移行してしまいます。原因の除去が治療の中心ですが、効果が出るまでの間は、腎不全の管理が特に重要です。体液量の評価を十分に行ったうえで、栄養管理に努め、食事療法や補助的な薬物療法を併用します。乏尿(尿の出が悪くなること)が続いたり、尿毒症による症状がみられる場合には、透析を開始します。透析が必要になるのは腎臓が機能を回復するまでの一定期間だけのこともあり、通常は数日から数週間で回復します。

早期発見のポイント

高齢の方は、気づかないうちに急性腎不全が発症している可能性があります。原因が「医学解説」で述べた「腎前性」の場合は血圧の低下がみられるため、突然低くなったりしたときは注意が必要です。毎日の血圧測定が早期発見に役立ちます。

大量に汗をかいたり、発熱や下痢などの体調不良で水分が失われ、体内に必要な水分量と塩分量がなくなる脱水症も原因になります。自覚症状としては、口の渇きや体のだるさ、立ちくらみなどを訴えることが多いです。脱水の程度は体重測定によって判断できます。たとえば食欲低下や下痢で体重が1日で2kg以上減少していれば、脱水症の可能性があります。また、高血圧で降圧薬を服用している方(特に高齢者)の場合、夏場の急激な血圧低下にも注意しましょう。

急性腎不全の場合、浮腫(むくみ)はあまり起きず、むしろ前述したような脱水状態になっていることの方が多いといえます。その他、尿量減少、食欲低下、全身倦怠感などが特徴です。血液検査では、血清尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン、カリウムが高値を示します。超音波検査やCT検査では、腎臓のサイズが正常~やや腫大していることがあります。

しかし、患者さん自身が、電解質異常や腎機能の指標として用いられる血清クレアチニン値の上昇に早期に気づくことは困難です。そのため、体調不良で病院を受診したときには、すでに重症の状態に陥っているケースも多くみられます。
一方で、入院中、特に心臓手術や多発外傷、循環不全、重症熱傷、敗血症などでICU(集中治療室)に入室している患者さんは、全身状態の悪化に伴い、急性腎不全を発症することがあります。ICUの患者さんは常に医師や看護師による管理が行き届いているので、たとえ急性腎不全が起こった場合も早い段階で軽度の異常に気づいて処置できます。ただし、ICUの患者さんはわずかな体調の変化も全身状態に影響を及ぼすため、軽度の腎障害であっても、より重篤な病態に陥ってしまうこともあります。

医薬品の使用で発症することもあるため、解熱鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬)を服用している方、アミノグリコシド系抗生物質や抗がん剤(シスプラチン等の白金製剤)の投与を受けたり、造影剤検査(ヨード造影剤)を行った方は、早期発見という観点からも、定期的な血液検査・尿検査を積極的に受けることが推奨されています。

予防の基礎知識

軽い急性腎障害も、繰り返すことでどんどん状態が悪くなり、やがて慢性腎臓病に陥ることがあります。場合によっては人工透析が必要になることもあるので、早期発見、適切な治療はもちろん、予防することも極めて大切です。

高齢の方は、「早期発見のポイント」でも述べたように、脱水症状や過度な血圧低下などが急性腎不全の原因になります。こまめに水分補給を行うこと、体重測定をすることで早めに脱水に気づけるようにしましょう。

降圧薬を内服している方は、毎日血圧を測定することをおすすめしています。通常の血圧と比較して極端に低くなっている場合、あるいは最高血圧が100以下に下がっているときなどは、服用を一旦中断して主治医に相談してください。普段から鎮痛薬を飲み過ぎないことも、日常生活の注意点として重要です。造影剤誘発性の急性腎不全の予防法としては、検査前後の生理食塩水による輸液療法が有効であることが明らかになっています。

急性腎不全は腎臓の機能が悪い人ほど起こりやすいといわれているので、健診結果などで、自分の腎機能の数値(クレアチニンとeGFR)をチェックしておきましょう。

岡本 昌典

解説:岡本 昌典
済生会和歌山病院
腎センター部長

※当欄に執筆した医師の所属・役職は、異動等により変わる場合もありますので、ご了承ください。

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