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済生春秋

第63回 愛鳥週間

 4月末の早朝「ホーホケキョ」と美しいさえずりが聞こえてきた。どこにウグイスがいるのか銀杏の木を仰いで見たけれど、発見できなかった。次の日も同じ時間、同じ場所から聞こえた。「次の日も」と期待したけれど聞こえなかった。
 最近都心でも公園や街路樹の緑が増えたので、野鳥も多くなった。池にカルガモが遊ぶ。清流にはカワセミが美しい姿を見せる。
 代わってカラスが減少した。家庭ごみの出し方のマナーが良くなったためだ。以前は何度かカラスが頭頂部をかすめて飛び去ってドキッとした。カラスは、高齢者や女性など弱い者を狙うから、私がターゲットになったのだ。

 5月10日から愛鳥週間。
 私の小学生のときは、愛鳥週間に向けての作文が宿題に出された。
 軒先にツバメの巣がある家もあった。原っぱからヒバリが急上昇する姿には、目を見張った。野鳥は、私たちにとって親しみの持てる身近な存在だった。

 私の少年時代のような自然環境にない今の子どもの野鳥への関心は、どうなのか心配になる。しかし、国立青少年教育振興機構の調査では「野鳥を見たり、鳴く声を何度も聞いたことがある」という子どもの割合は、近年増加している。国民の自然に対する関心は、少しずつ高まっている。

 今から40年前、福井県庁で自然保護課長の職にあった。課員に林武雄さんという全国的に有名な野鳥の専門家がいた。知識の乏しい私に基礎から教えてくれた。
 福井県では鳥獣保護センターの新設に携わった。当時は、県民の野鳥保護への関心は薄く、カラスなどによる農作物被害を訴える勢力が圧倒的に強かった。県議会の質疑は、有害鳥獣問題に集中した。
 応援勢力が少ない中、鳥獣保護センターは、林業試験所の御用済みの老朽化した小さな建物でのスタートだったが、今では大変立派な自然保護センターへと発展したのを見ると、大変うれしい。

 レイチェル・カーソンの古典的名著『沈黙の春』が述べているように、野鳥は自然環境のバロメーターである。野鳥の運命は、人間の運命である。
 最近愛鳥週間のメディアの扱いは少ないが、この機会に野鳥について考えることは、有益なことである。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

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