ホーム > 済生春秋 >  第51回 脳疲労を実感する

済生春秋

第51回 脳疲労を実感する

 最近、テレビの健康番組で脳疲労という言葉があることを知った。肉体だけでなく、脳も疲労するという。そういえば、思い当たることがたくさんある。

 講演の依頼を受けることがある。貴重な時間を私の退屈な話に付き合ってくれる人のために、相当に時間をかけて準備する。おおよその内容を記憶して臨む。メモを見ながらだと迫力が弱まるからだ。
 90分間の講演を終えると、ぐったりする。特に脳が機能しなくなったと感ずる。60分くらいだとそこまではならないが...。

  司会者が、質問を呼びかけることがある。不気味な沈黙が漂う。学会のように参加者が同じ問題意識を持っていれば、意味のある質問が積極的に出されるが、通常の講演会では、沈黙のままである。
 それでも誰かが勇気を奮って、質問をしてくれることがある。声が小さく、発言が整理されていないことがある。疲れ切った脳には質問の意味が理解できない。聞き返すのは失礼になると思い、質問を推測して回答することになる。

 国会の委員会で大臣が休憩を入れないで4時間、ぶっ通しで質問を受けることが多い。質問内容をしっかり捉え、答弁をする。
 私が公務員だったころは、大半の質問を事務方が答弁し、最後に「大臣の基本姿勢は?」というパターンが多かった。これだと大臣は、疲れることはなかっただろうが、今は大臣が自ら大半を答弁しなければならない。失言は、政治生命にかかわることがあるから、相当に脳疲労するだろうと、勝手に想像してしまう。
 前日に質問内容の通告があり、事務方が徹夜も厭(いと)わず、準備する。しかし、時には通告されない質問もあるから、やっぱり緊張するだろう。日常的に担当している局長であれば、事前通告なしでも、的確な回答ができるようにと、現役の局長の時は、心掛けていた。地方議会の委員会では、質問の事前通告はなかった。
 ともかく4時間の緊張に耐えられる政治家は、さすがだと感心する。

  脳のスタミナをつけ、脳疲労を避ける方法は? 脳疲労の回復方法は?
 インターネット上では脳疲労回復のための色々な方法が載っている。どれも当たり前のような方法で秘策ではない。
 私は、脳疲労になったら、ただただ目をつぶって、15分程度ぼんやりするのが一番の特効薬である。

炭谷 茂

すみたに・しげる

1946年富山県高岡市生まれ。69年東京大学法学部卒業、厚生省に入る。自治省、総務庁、在英日本大使館、厚生省社会・援護局長などを経て2003年環境事務次官に就任。08年5月から済生会理事長。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、富山国際大学客員教授なども務めている。著書に「環境福祉学の理論と実践」(編著)「社会福祉の原理と課題」など多数。

▲ページトップへ