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バヌアツ共和国におけるサイクロン被害の医療支援

HuMA(ヒューマ)の医療支援を通じて医師としての根本を再認識 岡山済生会総合病院救急科医長 稲葉基高

 バヌアツ共和国は83もの島からなる南太平洋に浮かぶ国で、ヤスール火山や、ブルーホールなど美しい自然に囲まれたリゾート地です。
 このバヌアツに3月14日、カテゴリー5という最大級規模の巨大サイクロン・パムが直撃しました。当初は通信が途絶え被害状況が把握できません。通信が回復すると、首都ポートビラのあるエファテ島の建物の90%が損壊、11人の死亡が確認されるなど、次々と被害の大きさが明らかになってきました。バヌアツのロンズデール大統領は、第3回国連防災世界会議で来日中、この地域として過去最悪水準の被害になったとして、国際社会による支援を訴えました。

 認定NPO法人災害人道支援会(HuMA:Humanitarian Medical Assistance)では、3月21日から4月16日まで現地で支援を行いました。HuMAは国際緊急援助隊(JMTDR)が発足した当初から登録していたメンバーが中心となって、より迅速な支援等を行うため設立された団体で、国内外の被災地への医療チームの派遣や災害医療の教育研修を行っています。

バヌアツ共和国におけるサイクロンパムの医療支援


(写真提供:HuMA)

 私は、初動調査隊の調査結果を受け、HuMAの第一次本隊隊長としてエファテ島北部の村、パナンギスで医療支援を行ってきました。
 3月27日、現地入りした一次隊の編成は、医師2人、看護師3人、調整員1人の計6人です。
 バヌアツは、もともと病院も医師も少なく、パナンギス村には医師がいません。地域の医療はヘルスセンターといわれる診療施設で看護師が担っているのが実情です。現地入りすると、看護師2人で2,000人ほどの医療を担当している状況でした。2人はかなり疲弊しており「センターの周りにある小さな集落の住民が心配だが、手がなく往診に行けない」と訴えました。このため、私たちは午前中はヘルスセンターで診療し、午後からはモバイルクリニックとして近隣の集落へ出かける医療支援を展開。合計528人の診療を行いました。

 多忙な現地の診療で印象深かった出来事があります。
 ある日「陣痛3日目の難産の患者を診てくれ」と頼まれました。
 私は妊婦診察の経験がなく、一瞬、断ろうと考えましたが、自分の他には医師はいません。意を決し、ポータブルエコー(V-Scan)で検査したところ、胎児の心拍はしっかりと確認できるものの横位でした。ここでの分娩は難しいと判断、胎児が元気なうちに搬送がよいだろうと地元の看護師に助言し、紹介状を作成して搬送しました。とかく専門性が問われる日本の医療で育ってきた自分としては、医師としての根本的な部分を問われたような気持ちでした。

 日本からの支援者の代表として同国のナツマン首相とお会いする機会もあり、感謝の言葉をいただきました。一次隊の活動は4月2日まででしたが、HuMAの医療支援は第三次本隊に及びました。

バヌアツ共和国首相を表敬訪問
バヌアツ共和国首相を表敬訪問(写真提供:HuMA)

 今回の被災者は16万人ともいわれ、医療支援活動で私たちが診療できたのはごく一部でしょう。バヌアツの被害には多くの方に関心を持ち続けていただきたいと、今も強く感じています。


※ 本会のバヌアツ共和国のサイクロン被害への支援は、福岡総合病院と大阪府済生会千里病院からも医師が派遣されています。

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