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パキスタン・イスラム共和国洪水被害支援(2)

3度目、初めて亜急性期派遣。マラリアの中、7割が子ども 千里病院 千里救命救急センター医師 長谷川 泰三

 7月のパキスタン洪水は、死者約1800人、被災者は2千万人以上、パキスタン建国史上最悪と言われる災害となりました。9月3日、国際緊急援助隊医療チームが派遣されましたが、現地では下痢症、呼吸器疾患、皮膚病、そしてマラリアが流行。さらには半数以上が小児患者で追加派遣が必要との現地報告から、私たち二次隊24人は14日から活動を開始しました。

 私は05年パキスタン地震(二次隊)、08年四川地震(一次隊)、そして今回、3度目の派遣となりました。05年は山間部で、08年は4000床(ICU120床!)の華西病院内で、今回は平野部での活動でした。

 通常は発災24時間から48時間以内に相手国に入るのですが、今回は1カ月以上も経過していますので、派遣される隊員の専門分野も変わってきます。直後には外傷への備えが重要ですが、亜急性期になってくれば感染症やストレスに対する知識も必要となってきます。しかも今回のパンジャブ州サナワン周辺はマラリア流行地域であり、マラリアの知識も必要でした。

 バンコクを経由し日本時間13日朝4時頃、ラホール国際空港に到着。ホテルで仮眠後、陸路をバスで6時間、ムルタンに移動し一次隊と合流しました。治安が悪いということで、地元警察がホテル、移動時のバス、診療所などライフルを抱えながら24時間警備に当たってくれました。ですから私たちが身の危険を感じることは、そのライフルが暴発しないかどうか心配する程度ですみました(笑)。しかし街の至る所に検問所があり、国全体がピリピリしている様子をうかがうことは容易でした。

 14日は一・二次隊が合同で診療を行い、15日からは二次隊のみの診療となりました。今回は13、14と2日間も引き継ぎの時間があったのも特徴的でした。十分申し送りができ、二次隊の診療に混乱なく入っていくことが可能でした。

 診療が始まりましたが、診療場所にはいつもの十字テントはありません。天候や治安の問題などからサナワンのルーラル・ヘルス・センターの建物内に日本の診療所を開設していました。数少ない現地の医者も一人、診療を行っており、協力し合いながら診療を進めました。

 今回、一・二次隊合わせて約3500人の患者さんを診療しました。疾病構造をみると下痢症、呼吸器疾患、皮膚病、マラリアが上位を占めていました。全体の6割が15歳未満の小児で、1割が1歳未満の乳児でした。

 小児は、WHO報告にもあるように、低栄養、栄養失調が大多数に認められました。そのことが災害の被害を拡大しているという印象を受けました。パキスタンは予防接種率の低い国です。幸い、麻疹のような感染症の流行は認めなかったのですが、ポリオを思わせるような小児麻痺の子を多数、診察しました。

 そしてマラリアです。二次隊は小児1190人を診察しましたが、その13%154人がマラリアでした。クロロキン耐性のマラリアが指摘されていますが、今回は耐性で困ったという症例はなく、皆速やかに解熱しました。

 診断には迅速キットを使いました。インフルエンザと同じように約20分で、「熱帯熱マラリラ」「それ以外のマラリア」「陰性」という診断ができます。しかしインフルエンザ同様、陰性という結果が出ても必ずしも「シロ」ではないので、そこが日本人医師には悩みの種でした。

 一次隊と二次隊の活動の違いにも触れたいと思います。一次隊は先行する調査隊からの情報をもとに活動場所を決定し診療を展開していきます。現地の保健局などに活動を連絡、報告もします。そして追加支援の要否を決定します。二次隊は、本来は周辺の状況調査(病院、インフラ、家庭環境等)を行いながら、更なる追加派遣の要否を決定するのですが、今回はこの調査が治安の問題もあって全くできないまま活動を終了することになりました。

 最後に個人的な意見を言います。今回の活動場所はパキスタンでも貧しい地域であり、まだまだ医療の需要はあると思われます。個人的には派遣される前に「いつまで活動を続けるつもりで日本は派遣を始めたのかな」と考えていました。亜急性期に派遣を開始するということは、出口も見えづらい活動になるだろうと思ったからです。亜急性期の派遣になればプライマリ・ヘルス・ケアの要素も強くなってくるからです。その面から考えると亜急性期における国際緊急援助隊の派遣は、「目的」が難しいことに加え、「結果」も見えにくいことから撤収の判断が難しいと思われました。

 最後になりましたが、千里病院の皆さん、活動中本当に温かいお言葉ありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

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